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黒衣の愛人 シークの憂い III

黒衣の愛人 シークの憂い III


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンスシークの憂い
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 トリッシュ・モーリ(Trish Morey)
 オーストラリア出身。初めて物語を作ったのは十一歳のとき。賞に応募するも、応募規定を誤ってしまい失格に。その挫折がもたらした影響は大きく、やがて彼女は会計士としての道を選ぶ。故郷アデレードからキャンベラに移り住んだとき、現在の夫と出会った。結婚し、四人の娘に恵まれ幸せな日々を送っていたが、夢をあきらめきれずもう一度小説家を目指すことに。数々の挫折を乗り越え、ついに自らの手で作家としての人生を切り開いた。今ではオーストラリアのロマンス作家協会で、副会長を務める。

解説

 実業家のラフィクは、王位を継ぐ兄カリーフの戴冠式に出席するため、クセイ王国へ向かった。ラフィクは久しぶりに母親の暮らす宮殿を訪ねたが、そこで付添役の女性をひと目見て、驚きのあまり言葉を失った。いったいなぜ、セラがここにいるんだ? 十一年前、ラフィクとセラは深く愛し合っていた。それなのに、彼が不在の間にセラは理由も告げず、さっさと別の男と結婚してしまったのだった。遠い記憶がよみがえり、ラフィクの胸に鋭い痛みが走った。彼女からの愛など欲してはいない……だが償いは必ずしてもらう。
 ■シークたちの華麗な恋愛模様を描いたシリーズ〈シークの憂い〉の第3話です。十一年ぶりに再会したかつての恋人は、未亡人となっていて……。動揺するラフィクの身にさらなる事件が!

抄録

「車をこんなにしてごめんなさい」セラは後部座席に身を縮めて座っていた。「でも、あそこにいられなかったの。逃げるしかなかったのよ」
 車はさらに深く沈み、みしみしという気味の悪い金属音がした。セラはたじろいで、後部座席にしがみついた。皮肉な言葉が口から出かかったが、ラフィクはすばやくのみこんだ。「そんなことはいい」それだけ言うと、車の後部から荷物を引っぱり出し、うしろにほうり投げた。固い地面に落ちることを願ったが、それよりもセラが車の後部から出られるスペースを作っておきたかった。「僕が声をかけたら、すぐに飛び出すんだ」彼はたたんである防水シートを見つけると、片手でさっと振り、すぐ下の柔らかな地面に広げた。たいして役に立たないかもしれないが、少しは保護になるだろう。
「車のこと、ごめんなさい」セラは口の中でもごもごと言った。「知らなかったの」
「そのことはもういいと言ったはずだ!」ラフィクはすばやく目測し、セラが飛びおりるスペースはあると判断した。「さあ、そこから外に出るんだ。用意はいいかい?」
 セラは心細そうにうなずいた。ラフィクはセラのためにもっとスペースを作ろうと、体を端に寄せた。彼女が傾いた座席を乗り越えようとアバヤをたくしあげたとき、金色の長い脚がちらりと見えた。
 車は片側が砂に埋まっていた。ラフィクはずるずるとすべり落ちた。「ラフィク!」セラが叫んで手を差し伸べたが、彼は防水シートの上に落ち、ころがって再び固い砂の上に戻った。
「さあ」ラフィクはセラに手を差し出した。「この手をつかんで、僕がいいと言ったら飛び出すんだ」
 セラはうなずくと、大きく息を吸った。彼女の目には恐怖と不安が入りまじった感情が浮かんでいる。
 ラフィクはセラのほうに身を乗り出した。セラは傾いた車のドア口で必死にバランスを取りながら、彼に手を伸ばした。車のフロント部分がさらに砂の中に沈んだが、ラフィクの手はしっかりとセラの手をつかんだ。そのとき、車の後部が持ちあがって二人の手が離れかけ、セラは息をのんだ。だが、彼はセラの手を放さず、握っている手に力をこめた。
「さあ、飛びおりるんだ!」
 セラは命令どおり飛びおりた。その瞬間、ラフィクが力いっぱい手を引っぱったので、セラは彼の胸にぶつかった。彼はセラを抱き締め、くるりと回転してくぼみの縁を離れると、安全な場所にころがっていった。
「なにを考えていたんだ?」ラフィクはどなった。「いったいなんのまねだ?」
 セラは言葉もなく、ただわなわなと震えていた。ラフィクは彼女を抱き締めたまま、そのうろたえた顔を、黒い瞳を見つめた。助けられたそばから罵倒され、目には傷ついた表情が浮かんでいる。セラが息を吸った瞬間、唇がうっすらと開いた。かつて彼のものだった唇が。
 ラフィクはその唇に荒々しくキスをした。奪い取るようなキスを。これまでの苦悩と不安と孤独を訴えるようなキスを。そして、セラのほっそりとした背中に両手をすべらせ、なめらかな黒髪に顔をうずめて引き寄せた。過去に過ちを犯した自分に制裁を加えるかのごとく容赦なく。それはまるで、死ぬほど喉が渇いていた男がやっと小川にたどり着いたかのようだった。やめろという理性の声が聞こえているのに、やめられなかった。自分の人生は自制心にかかっているとわかっているのに。
 今のラフィクに自制心はなかった。
 自分が感じることすべてが、セラに言いたかったことすべてが、この数時間の緊張のすべてが、キスに凝縮されていた。焼けつくような砂漠の太陽の下、砂丘の真っただ中で、ラフィクは狂ったようにセラの唇を求めた。
 だがそれも、セラがはっとして体をこわばらせるまでだった。彼女の髪に指を差し入れていたラフィクの手は濡れていた。
 激しい興奮と葛藤がわき起こり、答えの見つからない疑問が渦巻く。ラフィクは突然、セラを抱き寄せてキスをしたのと同じ速さで彼女を引き離した。
 彼は自分の指先を見た。「頭から血が出ている」
 セラは立っているのがやっとだった。足に力が入らず、よろよろする。彼はずっと私に怒りを感じていた。私を車から引っぱり出したあとも。それなのに、私にキスをした。息が苦しくなるほどのキスを。そのせいでますますわけがわからなくなった。
 それに、彼が心配しているのは私の頭の怪我のことだけだ。私はあの突然のキスの衝撃ですべてを忘れ、頭の中が真っ白になっていたのに。車で逃げたときの恐怖も、助かったときの安堵感も、彼が私を憎んでいるという事実も、頭から消えていた。
 彼は私を憎んでいる。確かにそう言った。そのことを言葉で、行動で私に示した。
 だったら、なぜ私にキスしたのだろう?

*この続きは製品版でお楽しみください。

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