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禁じられた花嫁

禁じられた花嫁


発行: ハーレクイン
レーベル: ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆2
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著者プロフィール

 デボラ・シモンズ(Deborah Simmons)
 日本では『狼を愛した姫君』でデビュー以来、ナンバーワンの人気を誇る作家。ディ・バラ家やド・レーシ家の面々を主人公に据えた中世の物語と、華やかなイギリス摂政期(十九世紀初頭)の物語を描き分ける。「どの作品もそれぞれ個性の際立ったものに仕上がるよう心がけている」と語る。夫と息子二人、猫二匹と迷い犬とともに、米オハイオ州に在住。

解説

★私が花嫁になる日は永遠にこない。だから、せつない恋心は胸に秘めて……。★
 “マロリーの古文書”を捜しにオークフィールド館へ向かう途中馬車が故障し、ヒーロウが立ち往生を余儀なくされていると、黒馬を駆ってハンサムな男性が現れた。彼は館の主クリストファー。古文書は館のいわくつきの蔵書だったが、火事で焼失したと言う。興味を持ったキットとともに、彼女はもう一冊存在するらしい“マロリーの古文書”を捜しに行くことになった。道中、何度も謎の男たちに襲われ、命を奪われそうになる。いったい誰が、なんのために? 不安を胸に旅を続けるうち、二人は強く惹かれ合い、やがてヒーロウは求婚される。だが彼女は、それを拒むしかない悲しい宿命を背負っていた。

抄録

 キットは金めっきの時計の長針と短針から目を離さなかった。舞踏会はどれくらい長く続くかわからない。こうした催しはたいてい夜通し続くが、客が帰ったりベッドに入ったりしたあとで、ここを見つけられたくなかった。
 こんなことをしても意味がない。すでにキットはうんざりしていた。それに一刻も早くこの衣装を脱ぎたかった。体の大事な部分に血液が通っていないように感じる。いつか正常に機能してもらいたい部分に……。
 そんなことを考えるのはやめよう。ヒーロウをチェスウィックからどうやって安全に連れ出すかという問題も。
「オークフィールドにあったマロリーの本は別の表紙で偽装されていたんだ。だから何年間も見つからなかったんだよ」キットは本捜しをおしまいにさせられたらいいと思いながら言った。
 だが、ヒーロウを思いとどまらせることはできなかった。「マーティン・チェスウィックも同じことをした証拠はないわ」
 チェスウィックが受け取った手紙は半分失われていて、その部分にどんな指示が書かれていたかは知りようがないのだから、当然だ。キットはそう思ったが、それ以上は言わなかった。本がここにあるとは思えないが、あるとしても、見つけ出すには一冊ずつ取り出して確かめなくてはならない。それに、ひと晩でやれる量ではない。
 それでもキットは本の背に指を走らせて、何か普通でないものを探していった。しばらくのあいだ聞こえるのは、時計がかちかちいう音と、火がぱちぱちいう音だけだった。ふいに静けさのなかで別の物音がして、ぎょっとしてドアのほうを見る。椅子はがたがたいっているものの、つっかい棒の役目を果たしていた。
 ヒーロウはといえば、部屋の反対側の本棚の前でうずくまって彼のほうを見ていた。これでは恋人同士にはとても見えないので、キットは急いでソファのところに行き、彼女にそこに来るように合図した。
 そしてためらうことなくヒーロウを横たわらせて覆いかぶさった。その間、ドアから目を離さなかった。だが、ドアは最初にがたがたしただけで、それきりやんだ。あとに続いた静けさのなかでキットは待った。それでも何も聞こえてこなかった。たぶん図書室で逢引しようとやってきた客が、先客がいるのがわかって立ち去ったのだろう。
 キットは低くため息をついて、首をヒーロウのほうに向けた。ヒーロウは仮面をはずしていた。その顔にも自分が感じているのと同じ安堵の色が浮かんでいたら、キットは立ちあがって本捜しに戻っただろう。だが、蝋燭の明かりのなかで美しい顔は光っていた。ヒーロウを初めて見たときの、暗闇に差すひと筋の光明のように。
 フードが脱げて金色の髪がこぼれ、束ねた髪がほつれて光を浴びている。いつもの冷静な表情はどこかにいき、目は半ば閉じられ、唇は開き、頬は上気している。ふいにキットはヒーロウに覆いかぶさっていることに気づいた。胸と胸は触れんばかりで、互いの口はほんの数センチしか離れていない。
 自分の行動を反省する間もなく、キットは頭を下げてヒーロウの唇に唇で軽く触れ、味わい、やわらかさを楽しんだ。ヒーロウの驚きと喜びの入りまじった低いつぶやきを聞いて、キットはほほえんだ。少しのあいだ、ふたりとも自分たちのあいだに流れる熱を分かち合った。
 だがこんな状況でも、キットは炎が激しく燃えあがってもおかしくないことに気づいて、少し身を引いた。親指でヒーロウの顎の線をなぞり、口が彼のために開くまで唇の端をからかった。ヒーロウは目を閉じていた。このすばらしい連れがなぜか無防備に見えて、キットの胸のなかで何かがふくらんだ。頭を下げて、もう一度キスをする。もっと深く。こうすれば彼女を自分のなかに取りこんで、自分にくっつけておけるかのように……。
 しかしこのときキットが聞いたのは喜びのため息ではなく、時計が十二時を打つ耳障りな音だった。そして昔話のシンデレラのように、ヒーロウはその音で一変した。何もかぼちゃに変わったりしなかったが、キットの腕のなかでその気になっていた女性はぱっと立ちあがり、彼の抱擁からあわてて逃げ出そうとして、頭と頭をぶつけてしまった。キットは額をさすりながら立ちあがった。
「大丈夫かい?」キットは尋ねた。だがヒーロウはすでに本棚のところに戻り、仮面とドミノを着けていた。彼女の隠しきれない手の震えが、ふたりのあいだで起こったことを物語っていた。
 キットのほうは回復に手間取った。本捜しに戻りながら自分を罵る。ヒーロウと親密な状況に陥るのはこれが初めてではないが、これまでは彼女の冷静さと彼の自制心がふたりのあいだに立ちはだかった。今みたいに彼女の冷静さが揺らいで、彼の自制心が消えてなくなった責任は自分自身にある。ぼくは紳士じゃなかったのか?

*この続きは製品版でお楽しみください。

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