マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・リクエスト

クレタ島の恋人

クレタ島の恋人


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・リクエスト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
購入する


著者プロフィール

 トリッシュ・モーリ(Trish Morey)
 オーストラリア出身。初めて物語を作ったのは十一歳のとき。賞に応募するも、応募規定を誤ってしまい失格に。その挫折がもたらした影響は大きく、やがて彼女は会計士としての道を選ぶ。故郷アデレードからキャンベラに移り住んだとき、現在の夫と出会った。結婚し、四人の娘に恵まれ幸せな日々を送っていたが、夢をあきらめきれずもう一度小説家を目指すことに。数々の挫折を乗り越え、ついに自らの手で作家としての人生を切り開いた。今ではオーストラリアのロマンス作家協会で、副会長を務める。

解説

 オフィスのドアを開けたアレックスは、我が目を疑った。だが九年の月日が流れたとはいえ、彼を見間違うはずはない。黒い髪、堂々とした風貌……たしかにニック・サントスが目の前にいる。クレタ島でともに過ごした日々、そして残酷な別れ。不意にすべてがよみがえり、アレックスの胸を締めつけた。でも、ニックは故郷ギリシアで一族の帝国を動かしているはず。なぜシドニーの不動産会社なんかにいるのだろう。その答えはすぐにわかった。彼は亡き社長の後任として来たのだという。ニックのもとで働くなんて、絶対に無理だ。ずっと守り続けた秘密を、知られるわけにはいかないのだから。
 ■“ラテン系ヒーローとの恋物語”――情熱的で強引、圧倒的にセクシーなラテン系ヒーローの魅力が満載の名作をお楽しみください。

抄録

 そう、結構じゃないの。私だって頭にきているのよ。私の暮らしに土足で踏みこみ、あれこれ批評しようとするなんてとんでもないわ。
 ニックの頬の筋肉がぴくりと動いた。「君は変わったな、アレクサンドラ。見かけはあのころと同じように、いや、たぶんそれ以上に美しいが、心の中はすっかり変わってしまった」
 変わらざるを得なかったのよ! 強く超然としていなければだめ、とアレックスの理性が命じた。彼が私の外見についてなんと言おうとかまわない。だが、実は違う。気にせずにいられない。
 アレックスは動揺気味にひとつ息を吸いこみ、ともかくも普通に近い口調に戻そうと努めた。「お願いだからほうっておいて。しなければならない仕事があるの」
 相変わらず静止したままのニックを見ると、彼女の頼みを聞き入れる気がないのは明らかだった。
 アレックスはデスクの後ろから歩み出た。「出口まで送るわ」
 少なくとも二人の距離は一メートルちょっとある。アレックスは心の中で危険度を値踏みした。二人が接近するチャンスはない。開けたドアの後ろで彼を送り出した瞬間、ある種の平和な空気が部屋を満たすはず。
 しかしドアの近くまで来たとき、ニックの手が伸びて彼女を引きとめた。焼けるように熱い大きな手で腕をつかまれ、アレックスの胸の鼓動は速くなった。この感触も力強さも覚えがあったが、以前はそこに優しさが伴っていた。いまは優しさのかけらもない。アレックスは怒りをおぼえた。
「アレクサンドラ」ニックの声には命令と哀願が入りまじっている。アレックスはつかの間目を閉じ、自分の名を呼ぶ彼の声に魅了されまいと必死で自制した。
「放して」自分の声が不思議なほど穏やかで冷静に聞こえたことに、アレックスは自信を得た。
 だが、ニックは彼女を放そうとしなかった。しかも、ただ彼女の腕をつかんでいるだけではなく、じわじわと自分の方に引き寄せている。いまや二人の距離は縮まり、アレックスには彼のかすかなコロンの香りや朝飲んだコーヒーの香りまで感じられた。それらすべての香りから、男性の激しい怒りがにじみ出ている。
「さあ、アレクサンドラ」
 腕をがっちりつかまれ、肘を動かせない状態で、アレックスは顔を上げて彼の目をのぞきこんだ。彼女は息をのんだ。彼の怒りは何か別のものに変わっている。何かもっと暗く危険なものに。
 ニックが手を離し、突然解放されたアレックスはバランスを失ってよろめいた。そして次の瞬間には、彼の腕の中に引き戻されていた。
 ニックの胸に抱き寄せられ、アレックスは固い岩にぶつかったような衝撃を受けた。熱くなめらかなその感触は胸が痛くなるほど懐かしかった。アレックスはひとつ大きく息を吸いこんだ。男性的な体に接近しすぎて頭がくらくらする。
 彼に触れたせいですべてが台なしだわ!
「放して!」アレックスは振りほどこうとしたが、ニックは両腕を彼女の背中にまわし、放すものかと抱き寄せてくる。
 アレックスは顔を引いて、彼を見上げた。
「なぜこんなまねをするの? これはいやがらせだわ」
「いやがらせだって?」ニックの声にはからかうような響きがあった。両目は揶揄するようにきらめいている。
 ニックは彼女の体を揺すりながら、指先で背中を撫ではじめた。その優しく官能的な動作に、アレックスの怒りはやわらいだ。
「いやがらせのはずがないじゃないか」ニックは言葉を続けた。「僕たちの間に何があったのか、覚えていないのか? 僕たちはただ抱き合っているだけだ。昔の思い出に敬意を表してキスくらいしてもいいと思うけどね」
 アレックスの頭の中で警報のベルが鳴りはじめた。まさか。彼とキスをするなんてあり得ない。まじめに言っているはずないわ。
 アレックスはニックの胸に両手を当て、ありったけの力をこめて押しやった。「あなたとは何も分かち合うつもりはないわ」
 アレックスの顔から何かを読み取ったに違いない。ニックは奇妙な目で彼女を見下ろすと、揺するのをやめ、突然彼女の体を放した。アレックスはすばやく彼に背を向けた。呼吸は乱れ、弾んでいる。アレックスはドアのノブをつかみ、彼のために押し開けた。
 ニックは一瞬足を止め、数回深呼吸した。ドア付近まで歩き、アレックスが不安に感じるほど彼女に顔を寄せる。「君が何度も何度も僕にキスをせがんだときもあったのに」
 アレックスは、自分の頭より十五センチほど高いところにある彼の顔をまともに見ようと、懸命に胸を張った。
「時は人を変えるわ」

*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。