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もう、涙はふいて レイクショア・クロニクル

もう、涙はふいて レイクショア・クロニクル


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks シリーズ: レイクショア・クロニクル
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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解説

 キンバリーの人生は順風満帆のはずだった。華やかなパーティーの席で婚約者とけんかになったすえ、手を上げられるまでは。深く傷ついた彼女はなにもかもすべて投げ捨てて飛行機に飛び乗ると、母の住む静かな湖畔の町へ向かった。やがて現地の空港に降り立ったとき、背の高い見知らぬ男性に声をかけられる。女性を誘惑するのなどお手のものといった態度に反感をおぼえ、キンバリーはつんと澄ましてその場を立ち去った。まさか、母の家でその“プレイボーイ”と再会し、心ならずもせつない恋に落ちていくことなど知るよしもなく……。

抄録

「あなたはばかじゃないわ」キムは答えた。「きっと自分でわかるはず」
「きっと、きみのことはいつまでたってもわからない。今後は、きみが何か言うたびに、それは本心からなのか疑うことになる」
 この言葉がぐさりときた。「あなたにうそをついたことは一度もないわ。これからも、そうよ」
「だけど、儀礼的に接していたじゃないか」
「それが罪だとでも?」
 ボウはにっこりした。「いや。ただ、きみには心から正直に接してほしいんだよ、キム。そして信じてほしい。きみが差しだすどんなものでも、おれは受け入れられる」
「よかった。わたしはダンスのレッスンを差しだしたい気分なのよ」
「おれはダンスはしない」
「いままではね。さあ、立ちあがって、ダンスに誘ってちょうだい」
「まだ鱒を食べている」
「その鱒は気に入らないんでしょう」
「だけど――」
「誘ってちょうだい、クラッチャー」
 驚いたことに、ボウはいともなめらかな身のこなしで、てのひらを上にして手を差しだした。「じつは、おれはダンスのリアリティーショーを見ていることで有名なんだよ」
 キムは基本的なダンスのステップをいくつかやってみせた。ボウは彼女の体を近くに引きよせようとしつづけた。キムのほうはダンスのホールドを作るよう求めつづけたが、それでは楽しみが減ると彼は言い張った。生まれついてのスポーツ選手であるボウは、覚えが速く、わずか数回試しただけで、ダンスフロアをうまく動きまわれるようになった。
「出来はどうかな、コーチ?」ふたりだけの世界にうっとりと入りこんでいる中年カップルのあいだを縫うように進みながら、彼が尋ねた。
「恥ずかしいふるまいはしていないわ。だから上々の出来ね」キムはほかのカップルに少しばかり気をとられすぎて、ターンのときにヒールがぐらついた。
 あやうく転ぶところだったが、ボウが支えてくれた。「おっとっと。捕まえた」
 三秒ほど、キムは体にまわされた両腕の感触を楽しんだ。その感触は……途方もなく甘い。岩のようにがっしりした筋肉に驚いたわけではないが、はっとさせられた。ボウは背が高くてすらりと細く、どんな身のこなしもしなやかで、信じられないほど強靱。キムはこの感覚をしばし味わってから、体を引き離した。それ以上長引かせると、どうしようもないほど夢中になりそうだ。
「きみをハイヒールから救うのは、これで二回めだ」
 あの空港での朝が、ひどく遠い昔のように思える。あれから彼のことを知りすぎるほど知った。広報資料を作成するうえで、過去をあれこれ尋ねたのだ。過去について話すときの彼の率直さはあまりに思いがけず、だが、あまりに魅力的で、キムは心惹かれずにいられなかった。話を聞いて浮かびあがったのは、つらい生いたちを抱えながらも、誠実さと努力を忘れず、困難に立ち向かうことをけっして恐れない人物像。キムが好きなタイプのクライアントだ。
 夜が更けて、ふたりはフェアフィールド・ハウスに戻った。ボウはすっかりご機嫌なようすだった。
 この時間、家のなかはしんと静まっていた。玄関広間に入ると、ボウは彼女の手を取って体を引きよせ、頭の上にかがみこんだ。
「いったい、何をやっているの?」キムはきつい口調で言い、彼をたたいて押しやった。
「きみにおやすみのキスをしようとしてるんだよ」ばかだなあ、という口調でボウは言った。「デートの最後にはみんなそうするだろう」
 正直なところ、キムはそうさせようかと思った。キスをすれば、相手のことがよくわかる。唇が男性の唇と重なったら、あとは本能に任せるのだ。そんなやりかたをするのは、自分だけだろうか。キスには何かがある。かすかな味や触感、角度や力加減、そういったことが、経歴調査よりも多くのデータを与えてくれる。たいていの場合、キスをすれば、その男性に惹かれる気持ちが正しいかどうかわかる。たいてい、答えはノーだ。
 だが、ことボウ・クラッチャーに関しては、そんな危険は冒せない。「もしもし?」とキムは言った。「第一に、これはデートではな――」
「デートみたいだった」ボウは反論した。「おれはきみと一緒にいるたびに、デートのような気がするんだ」
「どういうことかしら」
「なぜって、きみに夢中だから」彼が言う。「すっかりね」
 彼の言葉が、痛むはずのない場所に痛みをもたらした。「いいこと、第二に、わたしたちは“みんな”ではないの。クライアントと広報担当よ」
「はからずも、たがいに惹かれあうようになったクライアントと広報担当だ」
「あなたのほうは、そうかもね」

*この続きは製品版でお楽しみください。

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