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オリンポスの咎人 IV サビン

オリンポスの咎人 IV サビン


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks シリーズ: オリンポスの咎人
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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解説

 屈強な戦士たちが部屋になだれこんできたとき、グウェンは怯えてガラスの檻の奥に身を寄せた。伝説の生き物ハルピュイアを内に宿す彼女は実験のために監禁され、この一年、自由になる日を夢見てきた。わずかな希望を抱いて目を上げ、息を止める。戦闘の指揮を執るサビンという名の男が彼女を崇めるように見つめていたのだ。そして彼は解放すると約束して鍵を開けた。グウェンは安堵をおぼえ、彼の温もりに引き寄せられるように足を踏み出した。ところが、サビンはほかの戦士に向かって告げた。この女は利用できるから、おれの手元に残す、と。

抄録

“疑念”の番人サビンは、古代ピラミッドの地下墓地に立っていた。呼吸は乱れ、汗びっしょりで、手は敵の血に染まり、体は傷とあざだらけだ。彼は殺戮の現場を見まわした。彼もまたこの血の海を作り出した一人だ。
 たいまつの炎がオレンジと金色にちらつき、石壁に伸びる影と混じりあう。壁には深紅のしぶきが飛び散り、ぽたぽたと垂れ……血だまりを作っていく。砂混じりの床は黒く濡れてべとついている。三十分前に一行が通ったとき壁は明るい茶色だった。今、この狭い通路のいたるところに死体が並び、早くも死臭を漂わせている。
 この戦いで九人の敵が生き残った。九人は武器を取りあげられて片隅に追いやられ、縛りあげられた。恐怖で震える者がほとんどだ。数人だけが背筋を伸ばして顔を上げ、目に憎しみを浮かべている。負けてもうなだれる気はないのだ。感心じゃないか。
 残念だが、そんな度胸は叩きつぶすしかない。
 強者は秘密をもらさない。だがサビンがほしいのはその秘密だ。
 サビンはどんな命令を受けようと、しかるべきときにしかるべきことをやり遂げる戦士だ。殺戮、拷問、誘惑。そして同じことを仲間にもためらわず命じる。ハンターは彼ら暗黒の戦士が世の悪の根源だと決めつけている。ハンターに勝たなくては意味がない。この戦いに勝利してこそ、サビンの仲間に平穏が訪れる。当然の権利だ。どうしても仲間に平穏な日々を送らせたいとサビンは思っていた。
 乱れた浅い息づかいが聞こえる。それは自分自身の息であり、仲間の、そして敵の息でもある。誰もが持てる力すべてで戦った。これは善と悪の戦いであり、悪が勝った。いや、“ハンターが悪とみなした者”と言ったほうが正しい。サビンも、きょうだいの絆で結ばれた戦士たちも、そうは思っていない。
 戦士たちはその昔、パンドラの箱を開けて災いを世に放った。そして永遠の罰としておのおのがその災いを身に宿す呪いを神々から受けた。たしかに彼らはかつては悪の半身の奴隷であり、破壊と暴力にまみれ、良心のない殺戮者だった。だがいまや戦士たちは魔物を手なずけ、ほとんど人間といっていい存在となった。
 それでもときおり魔物は抗い、戦士を支配し、破壊する。
 だが生きる権利はあるはずだとサビンは思う。人間と同じく、戦士たちも友が傷つけば苦しみ、本を読み、映画を観、寄付もする。恋することもある。だがハンターはそうは考えない。暗黒の戦士がいなくなれば世界はよくなると信じている。平和で完璧なユートピアになると思っている。どんな罪も魔物のせいにしているのだ。手の施しようのない愚か者だからなのか、人生に満足できないのを人のせいにしているのか、どちらだろう。どちらにしても、奴らを殺すことがサビンの人生の最重要課題となった。奴らのいない世界こそサビンのユートピアだ。
 そのために戦士たちは安全なブダペストの城をあとにし、この三週間というもの、エジプトの荒れ果てたピラミッドをしらみつぶしにあたって、パンドラの箱の発見につながる聖遺物を探してきた。このパンドラの箱をハンターは戦士たちを倒すために使おうと考えている。そしてサビンらはようやく求めるピラミッドを探しあてた。
「アムン」サビンは向こうの暗い片隅にアムンがいるのを見つけて声をかけた。アムンはいつものようにすっぽりと影にとけこんでいる。サビンは捕らわれたハンターたちのほうに無表情で首を振ってみせた。「何をすればいいかわかってるな」
“秘密”の番人アムンは険しい顔でうなずき、こちらに歩いてきた。ひと言でも言葉をもらせば数世紀にわたって集めてきた秘密が流れ出すとでも思っているのか、いつも押し黙っている。
 生き残ったハンターたちは、シルクを裂くナイフのごとく仲間を切り裂いたたくましい戦士が近づいてくるのを見て、一様に後ずさった。勇敢な者でさえそうだ。それも無理はない。
 アムンは長身で引き締まった筋肉質の体を持ち、足取りは断固としながらも優雅だ。ただ断固としているだけならほかの兵士と変わらない。優雅さが加わっているからこそ、獲物をくわえて運ぶ猛獣さながらの静かな残虐さが感じとれるのだ。
 アムンはハンターの前まで来ると足を止め、男たちを見まわした。と、すっと前に出て真ん中の男の喉をつかみ、目と目が合うまで体を持ちあげた。男の足がぶらりと垂れ、両手がアムンの手首をつかむ。その顔から血の気が引いていく。
「その手を離せ、汚らわしい魔物め」ハンターの一人が怒鳴り、仲間の腰にすがりついた。「どれほど大勢の無実の人間を殺し、人生を破壊したと思ってるんだ!」
 アムンは動かなかった。仲間たちも。
「この男は善人だ」別のハンターが声をあげた。「殺される理由なんかない。それもこんな邪悪な奴らの手で!」

*この続きは製品版でお楽しみください。

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