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やさしき夜に抱かれ

やさしき夜に抱かれ


発行: ハーレクイン
レーベル: ハーレクイン・プレゼンツスペシャル
価格:900pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ローリー・フォスター(Lori Foster)
 愛に対する確固たる信念をセクシーな作風と切れ味のいい文章で表現し、読者の支持を得ている。高校時代からの恋人である夫と三人の息子とともにアメリカのオハイオ州に住んでいる。小説を書くのは大好きだが、いちばん大切なのは、どんなときも家族だと言う。

解説

 恐ろしい夢にうなされて、モリーははっと目覚めた。気遣うように彼女を見つめているのは、デア・マッキントッシュ。誘拐され、9日間も監禁されていた彼女を救ってくれた恩人だ。救出のプロで、鍛えあげられた体に自信と色気を漂わせるデアは、怯えるモリーに何も言わず、そっと抱きしめてくれた。そのやさしさはただの同情に過ぎないのに、彼のぬくもりがなければ、もう安心して眠ることもできない。雇うから、わたしを守って。モリーは気づくとそう頼んでいた。

抄録

 彼女はすばやく瞬きをした。
 デアは安心させるために慎重に話した。「僕は友達を助けに行った。君と一緒にトレーラーに閉じ込められていた女性たちの一人だ。そうしたら君もいたから、それで……」言葉を選びながら続ける。「それで、一緒に連れてきた」
 彼女の動きが少し止まった。おとなしくさせられるかもしれない。
 「病院に行くか、モーテルに行くか、それとも警察に行くか。好きなのを選んでくれ」
 時が過ぎていく。デアの鼻からしたたり落ちた血が、彼女の胸の上であざや無数の傷や汚れと混じり合う。彼女から手を離せないので、デアには鼻から流れる血をどうすることもできなかった。
 彼女は頭を上げてデアの肩越しに向こうを見たが、駐車場が安全かどうかを確かめるには暗すぎた。
 暴れだしたときと同じように、唐突に彼女はぐったりした。全力を出したせいか、絶えることのない恐怖のせいか、細い体が小さく震えている。
 声を震わせながら彼女はささやいた。「モーテル」
 予想外だった。
 「いいだろう」
 デアが離れて血を拭っているあいだに、彼女は前の席の背中につかまりながらゆっくり体を起こした。ひきつったように唾をのみながら尋ねた。「何か飲むものある?」
 デアは黙ったまま運転席のドアを開け、床から水のボトルを拾いあげた。力が入らないだろうと思い、キャップを開けてから渡した。
 「ああ、おいしい。喉が渇いて、川の水もまるごと飲めそう」
 「好きなだけ飲んでくれ。ただし、ゆっくりだ」
 彼女はシートに寄りかかって目を閉じたが、すぐにまた開いた。「今日は何日?」
 たいしたものだ。少しずつ落ち着きを取り戻し、状況を把握しようとしている。「三月九日、月曜日だ」
 「九日間も閉じ込められていたのね」
 デアは低く口笛を吹いた。九日間。それでまだ生きているとは。「そのあいだずっと、あのトレーラーの中にいたのか?」
 「ええ」彼女は感情を抑えようとしながら、再び水を飲み、唇をかみしめてから彼に顔を向けた。「鼻を蹴って悪かったわ。あなたのことが――」
 「気にするな」デアの仕事では、もっとひどいけがをすることがいくらでもある。すでに血は止まっているし、あざにすらならないだろう。
 彼女は、あざに囲まれた目を小さな手でこすってからため息をついた。「こんな姿を人に見られるわけにはいかないわ。今さら恥ずかしいとは思わないけれど、いろいろとうるさくきかれるだろうし」彼女は解決策を求めるようにデアを見た。
 「僕がチェックインの手続きをする」彼女は逃げないだろうという確信がしだいに強くなっていく。アラーニの話から想像していたよりも頭ははっきりしているし理性的だ。
 彼女は再び水を飲んだ。時間をかせいで静かに考えごとをするためだろう。
 ボトルを握りしめながら彼女は息を吸った。「お金は持っているわ。ミスター……」
 「デアでいい」
 彼女はうなずくと、爪が割れた汚い手を差し出した。「モリー・アレキサンダーよ」
 いかにも偽名っぽいが、デアはその小さな手を握った。「よろしく」
 先に手を差し出したのは彼女のほうなのに、デアが手を握ると警戒したらしく、ちょっと触れただけですぐに手を引っ込めた。「返すお金はあるわ。本当よ。でも……手元にはないの。理由はあとで話すけれど、警察にはかかわってほしくないのよ」
 「病院もか?」
 「ええ」考えるだけでも身がすくむらしい。
 「薬をのまされているんだぞ。病気になっているかもしれないし、傷ついているかもしれない……」
 「傷ついてはいないわ」
 彼女の言う“傷つく”は、デアの定義とだいぶ違うようだ。デアは眉をつりあげて、彼女の繊細な肌についたあざやひっかき傷を見つめた。「殴られただろう? 一度じゃないはずだ」
 彼女の目が再びくもり、声がかすれた。「ええ。生まれてこのかたあんなひどい目に遭ったことはないわ。でも大丈夫よ」
 「僕を安心させようとしているのか? それとも自分を?」
 「大丈夫だから。本当よ」
 デアは、破いて血まみれになった自分のシャツを見下ろすと、あふれ返っているごみ箱に投げ入れた。そして、旅行バッグから別のシャツを出そうと、彼女の脇に手を伸ばした。
 その瞬間、彼女は息をのんで顔を隠し、シートの隅に体を縮めた。だがすぐに我に返り、挑むように体を起こした。
 デアは怖がらせないよう手を止めた。「僕は君の味方だ。いいね?」
 彼女はつらそうに目をつぶり、うなずいた。
 なかなか根性がある。デアはシャツを着ると、腕を組んで待った。バンの中で意識を失いたくなかったら、彼女は早く決めなければならない。今だって気を失う寸前なのだ。
 波のように襲うめまいをやり過ごすようにしてから、彼女は咳払いをした。「今夜泊まれる部屋を取ってもらえると、とても助かるわ」
 「わかった」彼女の冷静さが不思議だった。普通なら、わめき続けて、両親や恋人の名を叫ぶだろう。彼女にはそんな大事な相手はいないのだろうか?
 デアの視線を避けるようにして彼女は再び唇をかみしめ、数回深く息を吸ってからささやいた。「あなたと一緒の部屋にして」目に涙が浮かんだ。彼女は瞬きをこらえてから、恐怖に満ちた声で言った。「今は一人になりたくないの」

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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