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甘いリフレイン

甘いリフレイン


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆1
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解説

 有名ピアニストとなったバネッサは12年ぶりに故郷の町に戻ってきた。そこで学生時代の恋人ブレイディと再会する。幼いながらに将来を誓いあった相手だが、ブレイディはある夜、一緒に行くはずだったダンスパーティをすっぽかした。傷ついたバネッサはその後、彼と連絡を取ることもないまま、父に連れられピアニストになるべく町を離れたのだ。歳月を経て魅力的に成長した彼を前に心揺れつつも、あの夜の裏切りを忘れられないバネッサ。だが、やがて彼女は知る――パーティの夜、自分の知らないところで何が起きていたのかを。

抄録

「きれいな犬ね」
「こいつをおだてちゃだめだ。今だって十分うぬぼれてるんだから」
「ペットは飼い主に似るって言うじゃない」軽い口調で言う。「なんて名前なの?」
「コング。一緒に生まれた子犬の中で一番大きかったから」コングは自分の名前を呼ばれて二度吠え、影を追ってあたりを駆け回った。「子犬のときに甘やかしたつけを、今になって払ってるんだ」ブレイディは手をのばして彼女の髪にふれた。「今日、ジョアニーのとこへ行ったそうだね」
「ええ」バネッサは彼の手を払いのけた。「とても幸せそうだったわ」
「ああ」ブレイディはひるまず、今度は彼女の手をとって指をもてあそびはじめる。「赤ん坊には会ったかい?」
「会ったわ。とてもかわいい子ね」バネッサが手を引っこめた。
「ああ」ブレイディがまた彼女の髪に手をのばす。「ぼくにそっくりなんだ」
 バネッサは小さく笑った。「相変わらずうぬぼれやなのね。ねえ、その手をどけてちょうだい」
 ブレイディはため息をついて手を引っこめた。「ぼくたち、ここによくこうして座ったね。覚えてる?」
「覚えているわ」
「初めてキスしたときも、ここに座っていたよ」
「いいえ、違うわ」そう言うと、バネッサは胸の前で腕を組んだ。
「違ったっけ」本当はブレイディもよく知っていた。「最初は公園だった。きみがぼくのバスケットを見にきたとき」
「たまたま通りがかっただけよ」
「いいや、見にきたんだ。ぼくが上半身裸でシュートをしてたから、胸の汗が見たくてね」
 バネッサはもう一度笑った。そうよ、彼の言うとおりだわ、と思いながら、振り返って影になっている彼の顔を見る。笑みを浮かべ、くつろいだ気分に浸っているらしい。この人は昔からそうだった。いつでもリラックスしていられるんだわ。そしてわたしを笑わせるすべを心得ている。
「そんな……あなたの胸の汗なんて……ちっともどうってことなかったわ」
「少々太ったけど、今でもシュートを打てるよ」ブレイディは軽い口調でそう言うと、彼女の髪をそっと撫でた。「あの日のことはよく覚えている。最終学年が始まる前の夏の終わりだった。きみはたった三カ月の間に、少女からセクシーな女性に変わっていた。栗色の長い髪や、ショートパンツからのびたきれいな脚に、目を奪われたものだよ」
「いつだってジュリー・ニュートンのほうばかり見ていたくせに」
「いいや、ジュリーを見るふりをして、本当はきみを見てたんだ。で、あの日、きみが公園を通りがかった。レスターズ・ストアへ行ってきたところだったんだろう、ソーダの瓶を持っていたから。たしかグレープソーダを」
 バネッサは眉をつりあげた。「ずいぶん記憶力がいいのね」
「だって、あれはぼくらの人生の転機だったもの。きみはこう言った。“あら、ブレイディ、暑いわね。ちょっと飲みたくない?”それからぼくに色目を使い始めて――」
「そんなことしなかったわ」
「いや、色目を使ったよ」
 バネッサは必死で笑いをこらえた。「色目を使ったことなんて一度もないんだから。あなたこそ上手なところを見せようと懸命だったわ。レイアップシュートやフックショットをして。それからわたしをつかんで……」
「覚えてる。きみはうれしがってた」
「あなた、体育館のロッカーの匂いがしたわ」
「そうかも。あれはぼくにとって今でも記念すべき最初のキスだ」
 わたしにとってもそうだわ、とバネッサは心の中でつぶやいた。無意識のうちに、彼女はブレイディに身をもたせかけて微笑んでいた。「わたしたち、若かったんだわ。すべてが熱く激しく、すべてが単純そのものだった」
「単純のままにしておくべきものもあるよ」だが、彼女の頭を肩に感じながらこうしていると、確信が持てなくなってくる。「ぼくら、友だち?」
「たぶん」
「きみがいつまでここにいるか、まだ聞いてなかったね」
「まだ決めてないのよ」
「でも、スケジュールがつまっているんだろう?」
「数カ月休みをとったの」落ち着きなくからだを動かす。「数週間パリに行くかもしれないわ」
 ブレイディはバネッサの手をとって、てのひらを上に向けた。かつて、この美しい手にどれほど魅せられたことか。長くて細い指に、赤ん坊のようにすべすべしたてのひらに、短く切りそろえた爪に。指輪は一つもはめていない。ぼくは昔、彼女に指輪をプレゼントしたことがあった。夏じゅう芝刈りをして稼いだお金で、信じられないほど小さなエメラルドがついた金の指輪を買ったのだ。それをプレゼントしたとき、彼女はキスをしてくれた。そして、“絶対に指からはずさないわ”と言ったのだった。
 子供のころの約束なんか、大人になったら簡単に忘れてしまうのが普通なのだ。ひょっとして今でもはめているんじゃないか、などと期待したぼくがばかだった。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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