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真夜中のバラ

真夜中のバラ


発行: ハーレクイン
シリーズ: MIRA文庫
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ノーラ・ロバーツ(Nora Roberts)
 メリーランド州に育つ。1981年、シルエット・ロマンス「アデリアはいま」でデビュー。1998年に「マクレガーの花婿たち」でニューヨークタイムズ・ベストセラーリスト第一位に輝き、翌年には年間14作がベストセラー入りを果たすなど記録的な人気と実力を誇っている。作品は全世界25ヵ国以上で翻訳され、日本でも1982年から100作近くが刊行されている。

解説

 人気作曲家のマギーは都会の喧騒に疲れ、小さな田舎町に移り住んだ。この古びた家では何もかも自分でしなければならないけれど、自然のなかで穏やかに暮らすことができる。だが、マギーの心は入居早々にしてかき乱されていた。荒れ果てた庭から白骨死体が掘り起こされたのだ。さらに、口の悪い造園業者のクリフがマギーのボディガードをすると言い張り、よく知りもしない男との同居生活が始まってしまった。私はいつになったら静かに暮らすことができるの……?

 ★火花散る情熱と事件の謎が交錯する、ホットでスリリングな恋物語。

抄録

 やがて、クリフがマギーの隣に腰を下ろした。おかしなこともあるものだ、とクリフは思った。彼女はさっきキッチンへ運んだときよりも、ずっと弱々しく見える。もう一度彼女をきつく抱き締めたい。あっという間のできごとだったが、さっき彼女を抱き締めたとき、何か強烈で官能的な感覚が体を走り抜けた。あの感覚は、どこか彼女の音楽に似ていた――そう、まさしく彼女の音楽だ。
 彼女と最初に会ったとき、仕事を断って立ち去っていたらどんなによかっただろう……。クリフはマギーから視線をそらし、溝に続く斜面を見つめた。「スタンと話をしたのかい?」
「スタン?」マギーはぼんやりとクリフの横顔を見た。手を伸ばせば届きそうなのに、彼が何キロものかなたにいるように思えた。「ああ、保安官ね」ほんの一瞬でかまわない。マギーはクリフに触れてほしかった。手を握ってくれればそれでよかった。「いいえ、保安官には電話しなかったわ。交換手に警察につないでもらったの。確かヘーガースタウンの州警察だったわ」マギーはそれっきり口をつぐみ、クリフが何か言ってくれるのを待った。
「そのほうがいいと思ってね」クリフがつぶやいた。「作業員は帰したよ。面倒がなくていいだろう」
「あら」トラックや作業員の姿が見えないのに気づかないなんて、よっぽどどうかしているわ。ゆっくりとあたりを見回すと、大きな黄色いパワーショベルだけが、溝の斜面の上にぽつんと放置されている。背中に日差しを受けていたが、体じゅうが氷のように冷たかった。
 しっかりするのよ。マギーは自分自身に言い聞かせ、背中をぴんと伸ばした。「ええ、それでよかったと思うわ。警察の許可が下りて仕事を再開できるようになったら、事務所に電話しましょうか?」てきぱきとした口調だった。しかし、マギーの喉はからからに渇いていた。一人きりになったらどうしよう? そう思うと、いても立ってもいられなかった。溝にあるあれと取り残されたら、どうすればいいの?
 クリフは振り向くとサングラスを外した。「僕は残るつもりだ」
 マギーは胸をなで下ろした。自分でもほっとした顔をしているのがわかったが、意地を張っている余裕はなかった。「そうしていただきたいわ。ばかばかしいかもしれないけれど……」そう言いながら、溝の方を見る。
「ばかばかしくはないさ」
「意気地なしって言ったほうがいいかしら」マギーは口ごもり、作り笑いを浮かべた。
「人間らしいって言うべきだ」絶対にそうするまいと思っていたにもかかわらず、クリフは手を伸ばしてマギーの手を握った。彼女はクリフがなぐさめ、元気づけようとしてくれているだけなのだと思った。それでも、彼の手の感触が引き金となって、マギーの中にさまざまな感情がほとばしり、抑えがきかなくなってしまった。
 マギーはすぐに立ち上がり、家の中に駆けこむべきだと思った。クリフは彼女を押しとどめるかもしれないし、そのままにするかもしれない。だが、マギーはその場から動こうとしなかった。じっと座ったままクリフを見つめ、熱い液体が体じゅうをめぐるような感覚に身をまかせていた。ほかに何も考えられず、それ以外はどうでもいいことのように思えた。
 クリフの指の一本一本が、次第に緊張していくのがわかる。マギーはそこに何か強烈なものを感じていた。それが彼のものなのか、それとも自分のものなのか、よくわからない。たぶん、二人の何かが溶けあっているのだろう。あたりはしんと静まり返り、クリフの呼吸する音だけが聞こえる。二人の間の張りつめた空気が、小刻みに震えはじめた。
 二人を隔てていた距離がゆっくりとせばまり、唇が重なった。
 強烈な緊張感。別々の人間が、これほど強く相手を意識できるなんて思ってもみなかった。しかも、感覚だけを頼りにして。マギーにはわかった。何年かたって、目と耳をふさがれていても、唇を触れただけでそれがクリフだとわかるだろう。またたく間に彼女は、クリフの唇の形や舌の味や感触に夢中になった。二人は唇を重ね、手を握りあっていたが、ほかはどこにも触れようとしなかった。今はそれだけで充分だった。
 マギーの予想に反して、その口づけは荒々しいといっていいほど激しかった。初めて交わすキスにありがちな甘さやためらいはかけらもなかったが、マギーは逃げようとはしなかった。クリフがトラックを降りてきた瞬間から、彼のそういうところに惹かれていたのだろう。変わっている。そう。私が今までにかかわったどの男性とも――そして、ただ一人肉体的に結ばれた相手とも――違っている。それは、出会った瞬間からわかっていた。慣れ親しんだものなどもういらない。過去を思い返すのはもうごめんだ。クリフは私をおだてたり、崇拝したりしないだろう。彼には強烈な反応を求めるだけの強さがある。クリフの口づけにマギーは酔いしれた。
 彼女がどんなにきゃしゃで弱々しく見えるか、クリフはすっかり忘れた。それほど、彼女の反応は大胆だった。あれほど官能的な曲を作る女性だ。激しく、底知れない情熱を秘めているのも当然かもしれない。しかし、その情熱を何年も待ちかねていたかのように求めてしまうのは、いったいどういうことだろう?
 マギーはクリフが人生でかかわりたいと願うような女性ではなかった。しかし、彼女に唇を重ねながら、そんなことを思い返すのは不可能だった。マギーを抱き締め、突き上げてくる衝動を午後の透明な光の中で満たしたい。クリフはそんな思いにかられていた。痛いほどの衝動をやっとの思いで抑え、クリフは身を引いた。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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