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一夜だけの婚約者

一夜だけの婚約者


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 トリッシュ・モーリ(Trish Morey)
 オーストラリア出身。初めて物語を作ったのは十一歳のとき。賞に応募するも、応募規定を誤ってしまい失格に。その挫折がもたらした影響は大きく、やがて彼女は会計士としての道を選ぶ。故郷アデレードからキャンベラに移り住んだとき、現在の夫と出会った。結婚し、四人の娘に恵まれ幸せな日々を送っていたが、夢をあきらめきれずもう一度小説家を目指すことに。数々の挫折を乗り越え、ついに自らの手で作家としての人生を切り開いた。今ではオーストラリアのロマンス作家協会で、副会長を務める。

解説

 自宅でパソコンで顧客とやり取りし、秘書の仕事をこなすイブ。このバーチャル秘書は理想的な働き方だとイブは思っていたが、顧客の一人、レオ・ザモスに対しては細心の注意を払っていた。大富豪で常に女性との噂が絶えない彼とは、3年前、あるパーティで出会って熱烈なキスをかわしたことがあるからだ。レオはそれがイブだったとは気づいていないが、知られてしまえばこの職を失ってしまう。だがそんなある日、イブをとまどわせる事件が起きた。レオが交渉する企業が既婚の信用できる取引相手を求めてきて、独身のレオは一夜だけイブを婚約者に仕立てあげることにしたのだ!

抄録

 息をのむ間も考える間もなく、レオの唇がイブの唇に触れた。羽のように軽く触れただけでもその衝撃は大きく、イブは身を震わせてレオにもたれ、彼の揺るぎないたくましさをうれしく思った。
 再びレオの唇が重なってくると、イブはさらにうれしくなった。今度はからかうように、なだめるように唇をもてあそぶキスに息もつけなくなる。
 すすり泣くような快感の声が聞こえ、それが自らの欲望が発した声だとイブは気づいた。そして自分がレオにしがみつき、引き締まった肩に指を食い込ませていることにも。
 そのどちらか、あるいは両方がレオの何かの引き金を引いたことにも気づいた。突然、キスが激しく荒々しくなり、イブは快感の波にのまれ、押し流された。こんな感覚はこれまで一度しか経験したことがない。レオの唇、頬にかかる熱い息、彼の香り。それが今感じているすべてだ。
 自分を抱く鋼のような腕とぴったり押しつけられた硬い体の感触にイブは我を忘れ、何も考えられなかった。こうして唇を重ね、舌を絡ませてさらに深いキスへと誘う彼に応えること以外は。
 この激しいキスを、レオの腕に抱かれた感覚を思い出した夜が幾度あっただろう? 見知らぬ男性との一度限りの熱い出会いにかき立てられた秘めた幻想。それでもこの狂おしいまでの欲望の発露は記憶にない。
 この感覚を再び味わうこと。それこそイブが夢にまで見たことだった。やがてレオの唇が喉へと移り、彼のこわばりをおなかに感じてイブは身を震わせた。彼の両手がわきを這い上がり、硬くなった胸の頂に親指が触れて震えはさらに激しくなる。
 レオの唇が再び唇に戻ってくると、イブはうめき声をもらした。だがほんの一瞬触れただけで唇は離れ、冷たい空気が流れ込んで彼はいなくなった。息を切らし、呆然として目を開けたイブは何が起きたかもわからなかった。
「とてもよかった」レオが低く言った。「それでいい。ちょっと待ってくれ。君に渡すものがある」レオは背を向けて寝室に姿を消した。
 イブは背後の戸棚にもたれて両手で顔を覆った。三年前と同じように欲望に我を忘れ、はしたなく彼に応えてしまうなんて。
 とてもよかったですって? とんでもないわ。あと十秒もすれば、レオは私の服を脱がすことができた。二十秒もすれば、たぶん私は彼を煩わせまいと自分から脱いでいただろう。私が緊張しないようにですって? あんなキスをしておいて、緊張しないわけがないでしょう? 三年もたったのに私は少しも賢くなっていないの?
 気持ちが落ち着く前にレオが戻ってきた。タイを首にゆるく巻き、ジャケットを腕にかけた彼の表情は読み取れない。その顔に浮かんでいるのは予想した満足感ではなく、居心地の悪さに近かった。彼が手にしている二つの小さな箱を見たとき、イブはその理由がわかったような気がした。
「はめてみてくれ」レオは箱を差し出した。「今夜のために借りてきた。どちらかが合うといいが」
「借りてきた?」イブは用心深く箱を見た。こういうブルーのベルベットの箱の中身はわかっている。イブが指にはめようとしている光り輝くものは、決して彼女のものにはならない。レオの言葉がはっきりそう告げていた。だがイブの心に引っかかったのはそういうことではなく、この策略そのものだ。うわべを繕うために嘘を重ねることだった。「本当にこんなものが必要かしら?」
 レオはイブの手を取り、手のひらに箱をのせた。「君が婚約指輪をはめていないと不審に思われる」
「ただの恋人ということじゃだめなの?」
「婚約者のほうがいい。そのほうが責任感があるように見える」ジャケットに腕を通しながらレオはウインクした。「それに、もう婚約者だと言ってしまった。さあ、はめてごらん」
 イブはしぶしぶ一つ目の箱を開けた。大きなスクエアカットのダイヤモンドがまばゆいばかりにきらめき、彫刻がほどこされたホワイトゴールドの台座にはピンクの小さなダイヤモンドが並んでいる。息をのむほどすばらしい指輪だ。
 だが二つ目を開けたとき、ダイヤモンドはかすんでしまった。セイロンサファイアの両側にダイヤモンドが配されたみごとな指輪。これほど美しいものは見たことがない。もちろん、こんなに美しいものを身につけるのを想像したこともなかった。イブはダイヤモンドの指輪が入った箱を置き、もう一つの箱からサファイアの指輪を取り出した。祈るような思いではめた指輪が関節の上を滑って指のつけ根にぴったりと落ち着くと、喜びが込み上げてきた。
 イブは指輪をはめた手をためつすがめつして、青い光が躍るのを見つめた。「きっとものすごく高価なんでしょうね」
 レオは無頓着に肩をすくめ、鏡の前に立って手早くタイを結んだ。「そこそこはするだろうね。ただ、買ったわけではないから」
「ええ、もちろんそうだけど」婚約を周囲に納得させるために、ひと晩借りただけ。私を借りたように。
 残酷な計画だと思いながらも、この信じられないほど美しい指輪を愛する人からもらったらどんな気持ちがするかと想像せずにはいられなかった。“はめてごらん”ではなく、心を込めて“愛している。結婚してくれ”と言いながら指輪をはめてくれたら……。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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