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ラヴェンダーの密約

ラヴェンダーの密約


発行: ハーレクイン
レーベル: ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ニコラ・コーニック(Nicola Cornick)
 イギリスのヨークシャー生まれ。詩人の祖父の影響を受け、幼いころ歴史小説を読みふけり、入学したロンドン大学でも歴史を専攻した。卒業後、いくつかの大学で管理者として働いたあと、本格的に執筆活動を始める。現在は、夫と二匹の猫と暮らしている。

解説

 結婚適齢期をとうに過ぎて23歳になったラヴェンダーは、いつか幸せな結婚をすることを夢見ていた。理想の夫に思い描くのは、バーナバス・ハモンド。優美な顔立ちに気品あふれる物腰の彼はあまりにすてきで、ラヴェンダーはときおり挨拶をするものの、親しくなれずにいる。そんなある日、森を歩いていた彼女は聞き慣れない音を耳にした。息をひそめて近づくと、バーナバスが友人と剣の試合をしている。表情は真剣そのもので、体はしなやかでたくましい。その姿に見とれ、ラヴェンダーが誤って音をたてたとき、バーナバスにのぞき見していたところを見とがめられ……。

 ■ドラマティックで華麗な物語で人気のニコラ・コーニックの作品をお届けします。ヒロインは『運命の遺言状』でヒーローをつとめたルイス・ブラバントの妹、ラヴェンダーです。

抄録

「当時より今のほうが親しいお友だちみたいね」ラヴェンダーは思いきって言った。ふたりの男の気さくな友情も先ほど強く印象に残ったからだ。
 バーニーは声をあげて笑った。「ああ、彼は尊敬するということを学びましたからね。いや、ジェームズは根っからいい男で、ぼくは何年も前から友だちだと思っています」彼はためらった。「とはいえ、ミス・ブラバント、試合を目撃した件は黙っていていただけるとありがたい」
 ラヴェンダーはびっくりして立ち止まった。「もちろん黙っていますわ、お望みとあらば。でも、貴族のお友だちがいることを知られたくないというのは、ある意味では、貴族になりたいと思う気持ちの裏返しじゃないかしら?」
 言ったとたんに、言わなければよかったと後悔した。こんなふうに挑発的な口のきき方が許されるほどバーニーとは親しい間柄ではない。ラヴェンダーは上流社会にありがちな社交辞令をむしろ嫌っているが、少なくとも、常に礼儀をわきまえて話すよう心がけてきた。それなのに今、ふだんとはまるで違う話題に気を許し、ずけずけと質問してしまった。バーニーは彼女の率直な物言いに驚いて両の眉を上げた。しかし面食らった様子はなく、言葉を濁さずに答えた。
「とんでもない。本当にだれにも知られたくないんですよ。父の耳にでも入ったりしたら、恥も外聞もなく利用しかねませんのでね」
 ラヴェンダーは顔をそむけて、また歩きだした。少しきまりが悪かった。彼の言いたいことはよくわかる。アーサー・ハモンドは上流階級の仲間入りをしたくてうずうずしている人だから、息子のバーニーにそんな友人がいると知ったら、おそらく有頂天になるだろう。世間の注目を集めるためにふたりの関係を利用し、今の温かい友情を壊してしまうかもしれない。
「では、いままでずっと秘密にしてきたの?」ラヴェンダーはふたたびわき上がる好奇心を抑えられなかった。
「でも、それはたくさんある秘密のひとつにすぎないんですよ」バーニーはさらりと言った。ラヴェンダーを見つめるまなざしはおもしろがっているようだった。「たいていの場合、真実をしゃべらないほうが楽ですからね」
 ラヴェンダーはその言葉を、自分が彼について知っている事柄と結びつけてみた。確かにほとんどが仮定や推測を基にしている。店に関してであれ、父親のことであれ、彼の人生に関してであれ……。バーニーがわたしのことを甘やかされた上流階級の娘と決めつけているようなのと同様、わたしも彼を、いつかは当然のごとく店を継ぐ堅実な商人の息子と見なしていた。急に頭の中が混乱してきた。
 ふたりは森のはずれにある柵の踏み段までたどり着き、木陰で立ち止まった。太陽の光が何本ものまばゆい矢のように、木の葉の隙間から斜めに差しこんでいる。ラヴェンダーは額に手をかざした。
「スケッチブックを持ってくださってありがとう。ここまで来れば、なんとかひとりで家に戻れますから」
「せめてこの踏み段を越えるのを手伝わせてください」バーニーはささやくように言った。そしてラヴェンダーが承諾も辞退もする間もなく抱き上げると、怒ったようなしかめっ面で柵の向こう側に下ろした。ラヴェンダーは落ちないように彼にしっかりとつかまった。彼のシャツの手触りはやわらかく、その下にある熱く固い筋肉をまたしても感じた。ラヴェンダーは急いでバーニーから離れた。
「本当にもう――」
「あなたは足首のけがをそれ以上ひどくしたくなかったんでしょう、ミス・ブラバント?」
 バーニーは彼女にスケッチブックを手渡した。
「いつか絵を見せてくれませんか? 大いに興味があります」
 ラヴェンダーは本当かしらと思って彼を見た。彼の表情は真剣そのものだった。「本気でごらんになりたいのなら……」
 バーニーはにこっと笑った。「ありがとう。本当にひとりで帰れるのでしたら、ぼくはここで消えますよ、ミス・ブラバント。森を歩くときはくれぐれもお気をつけください。何に出くわすかわかりませんからね」
 ラヴェンダーはまた頬が赤らむのを感じた。彼にまっすぐ見つめられて、一瞬、屈辱感に圧倒された。フェンシングの試合を盗み見たことをあからさまに責められたわけではないが、突然、良心がとがめたのだ。わたしが彼を眺めていたのは今日がはじめてではないのを、バーニーは知っているにちがいない。実は二カ月ほど前にも、森の中を川に沿って歩きまわっていたとき、木陰になった川の淵で泳ぐバーニーを目にしたのだ。褐色の肩や背中で水を切りながら力強く泳ぐ姿を見て、ラヴェンダーは、自分もすぐさまシュミーズ一枚になって、いっしょに泳ぎたいと思った。やましさを感じて顔が真っ赤になり、ラヴェンダーは背中を向けて駆けだした。裂けたスカートも、脚の痛みも、逃げるように去っていく彼女のうしろ姿をあっけにとられた顔をして眺めているはずのバーニーのこともかまわずに。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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