マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクション恋愛小説ロマンス小説

オリンポスの咎人 ギデオン

オリンポスの咎人 ギデオン


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks シリーズ: オリンポスの咎人
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆1
◆レビューを書く

¥0サンプル
購入する


解説

 遥か昔より、ブダペストの町には天使とも悪魔ともささやかれる美しい男たちがいた――それはギリシャの神々に呪いをかけられ、心に魔物を閉じ込められた不死身の戦士たち。その中のひとり“嘘”の魔物を宿すギデオンは、仲間が捕らえた女スカーレットに妙な懐かしさをおぼえていた。すると彼女はかつてギデオンの妻だったと告げ、彼は衝撃を受ける。結婚していたことどころか、彼女のことさえまったく記憶にないのだ。ギデオンはそれ以上の説明を拒むスカーレットから真実を引き出そうと決意する。彼女を誘惑し、快楽の虜にして。

抄録

 ギデオンはよほど青が好きらしい。どうしてだろう?
 理由を知っていて当然なのに、わからないのが悔しい。
 そんなことどうでもいい、とスカーレットは自分に言い聞かせた。ギデオンが何を考えようと興味はない。
 「きみを待ってるのは楽しいよ」ドアの外からギデオンの声がした。
 その深い声を聞いただけで全身に鳥肌が立った。ドアの前で行きつ戻りつしている彼の姿を想像すると笑いたくなってしまう。ギデオンは忍耐とは無縁だ。スカーレットはそんなところが好きだった。彼女に会いに来るときのギデオンがそうだったからだ。
 任務が終わるとギデオンはいつも彼女の房に駆けつけてきて顔にキスし、曲線を確かめるように両手で体を愛撫した。
 “会いたくてたまらなかった”ギデオンはいつもそう言った。
 “もう置いていかないで”スカーレットの答えも決まっていた。
 “できるものならずっとこの房でいっしょにいたい”ギデオンの顔に悲しげなほほえみがよぎった。それは最後にこの会話を交わしたときのことだ。“いつかきっとそうする”
 “だめよ”ギデオンといっしょにいたい気持ちは強かったが、彼にそんなことはさせられない。“いいから……あなたがいなかったことを忘れさせて”
 ギデオンは忘れさせてくれた。
 スカーレットの首に取りつけられた首枷さえはずせればいっしょに逃げるのにとギデオンはいつも言った。でも彼にその力はなかった。首枷をはずせるのはゼウスに選ばれた数人のみだ。肌に張りついているかのようなその黄金の首枷は魔物の力を弱め、スカーレットを弱くした。
 それに、瞬間移動でタルタロスの牢獄から出入りできるのは選び抜かれた不死族の一団だけだ。瞬間移動とは、念じただけでまったく別の場所に移動できる能力をいう。ギデオンはそのグループには入っていなかったため、逃げ出すとすれば看守の目を盗んで牢獄を通り抜け、出口までたどり着かなくてはならない。ひとりだけでも困難な道筋であり、たとえ首枷がなくてもふたりでは不可能だ。それでもギデオンはやってみたいと言った。
 そのことを思い出すと、スカーレットは心がやわらぐのを感じた。だめよ! そんな弱さと闘わなければ。今度彼に裏切られたらもう耐えられない。ギデオンに期待できるのは、そう、裏切りだけだ。
 スカーレットはシンクにブラシを放り出し、頭からドレスをかぶった。やわらかい布地が肌を撫でるのを感じてため息をつく。これまでこんな服を着たことは一度もないけれど、着てみてもよかったかもしれない。なんて贅沢なんだろう……。やわらかな下着の感触にもため息が出た。彼女はヒールのある靴ではなくはき慣れた自分のブーツをはいた。心のない男をひざまずかせるにはこのほうがいい。
 服を着ると、スカーレットは心を決め、背筋を伸ばして振り向いた。最後に一度ギデオンと対面してから捨てるつもりだ。それでふたりの関係はおしまいにする。ようやく決着をつけられる。それこそが彼女に欠けているもの、必要なものだ。そのあとは自分の手で築こうとしている世界に戻ろう。人間の傭兵としての生活が待っている。傭兵というより裏の世界のなんでも屋に近いが。
 行くのよ。ギデオンとのことは終わらせる。
 「これってなんのつもり?」スカーレットはバスルームからつかつかと出ていってリボンを差し出した。甘い香りの蒸気が雲のようにその体を包み込む。
 貫くようなギデオンの目が、かつて好んだ場所で何度か留まりながら彼女の姿を眺めた。その目に暗い何かが忍び寄った。「なんだって?」かすれ声でギデオンは言った。「そのリボン、ひどいしろものだと思ったんだが」ということは美しいと思ったらしい。
 彼女にきれいなものを身につけてほしかったということだ。なんて……やさしいんだろう。
 気を許してはだめよ!
 ギデオンは、さっきまでなかった移動式の四角いテーブルの前に立って腕組みしている。彼女の首を絞めたくなる衝動を抑えるため?
 「女に小学生みたいな格好をさせるのが好みなのね」スカーレットは胸の高鳴りも血管を通じて体に広まる熱さも無視した。「そんな無邪気な願望を持っていたなんて知らなかったわ」そう言ってからスカーレットは毒づきたくなった。口調がかすれてしまった。その言葉がもっときわどい質問を連想させたからかもしれない。今のギデオンはどんな願望を持っているのだろう?
 どんなふうに愛し合うのが好み? かつてのように、やさしくすべてを奪い尽くす?
 どんな女が好み? かつての彼女のようなやさしい女? きっとそうだ。
 あの地下牢で出会ってから、ギデオンは惹かれているそぶりをほとんど見せないし、彼女のほうは取りつくしまもない険しさだ。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。