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和書>小説・ノンフィクションハーレクインウエディング・ロマンス・ベリーベスト

ふたりの六週間

ふたりの六週間


発行: ハーレクイン
レーベル: ウエディング・ロマンス・ベリーベスト
価格:400pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 デビー・マッコーマー(Debbie Macomber)
 四人の子供を育てながら作家になる夢をかなえ、いまや大ベストセラー作家に。100作を超える著作は世界中で6000万部も出版され、多くの人に生きる勇気を与えている。ワシントン州ポートオーチャードに住む。

解説

 過保護な母親のもと、窮屈な生活を強いられてきた音楽家のヒラリーは、初めてのひとり暮らしに心を躍らせていた。だが、引っ越した翌朝に異変が起きる。冷蔵庫の中の食料がなくなり、居間には見覚えないバッグが置かれているのだ。困惑していると、突如体格のいい男性が現れ、怒りもあらわに言った。「ぼくの家で何をしているんだ?」

抄録

 ショーンの車のドアが閉まる音がしたので、ヒラリーはパーティ用のとんがり帽子をかぶった。そして彼が玄関のドアを開けると、紙笛を吹いて大声で言った。「じゃーん!」
 ショーンはまるで地雷原へ足を踏み入れたかのように、その場に凍りついた。
「おめでとう」ヒラリーはそう声をかけて歩み寄り、彼の腕に自分の腕を絡めた。「あなたがおなかをすかせていればいいんだけど。腕によりをかけてごちそうをこしらえたの」
 相変わらずショーンは突っ立ったままだ。「ヒラリー、そんなことしなくても……」
「驚いたでしょう?」
 ショーンが悲しそうにゆっくりとうなずいた。ヒラリーが期待していたような興奮を、彼はまったく示さなかった。どちらかといえば痛ましいほど困惑しているように見える。ショーンの気分をどう解釈したらいいのかわからなかったので、ヒラリーはテーブルへ近づき、並んでいるごちそうを示した。
「ひとつ問題があるんだ」ショーンがとまどった声でためらいがちに言った。
「なに?」ヒラリーは振り返って彼を見た。
「友達が何人かで計画を立ててくれて……」
 ヒラリーはたちどころに自分の愚かさを悟った。勝手にディナーの支度をする前に、まずショーンに予定を確認すべきだったのだ。彼女は無理にほほえんだ。「だったら、お友達と行かなくちゃ」
「しかし――」
「気をつかわなくていいのよ、ショーン」ヒラリーは相手を安心させるために懸命に笑顔をつくった。もちろん、ひどくがっかりしたけど、わたしが悪かったんだもの。
「向こうを断ることにしよう。とはいえ、車のなかで友達がふたり、ぼくを待っているんだ……。よし、ちょっと断りに――」
「とんでもない」ヒラリーは本気で言った。彼女は大きなナポリ風タルトのかたわらに立って両手を握りあわせた。ばかな自分が恥ずかしくて、穴があったら入りたかった。「お友達と行かなくてはだめ。わたしとのディナーは、日を改めてすればいいんだもの」
「これ、それまで持つかな?」
「もちろんよ」彼女は嘘をついた。
「どれひとつとっても、すごくすてきだ」ショーンがテーブルを見まわしながら言った。
「たいして手間はかからなかったのよ」ヒラリーはまた真っ赤な嘘をついた。そしてごくりとつばをのみこみ、このまま笑顔を保ち続けられますようにと祈った。
「きみって、本当にかわいらしいことをするんだね、ヒラリー」ショーンがささやいた。
“かわいらしい”ショーンはまるで、彼に首ったけの十六歳の少女に話しているみたいだった。かわいらしい、まったくそのとおりだわ! ヒラリーはなにか言おうとしたが、彼女が口を開く前にドアが開いて、この前鋭い口笛を吹いたショーンの友人が顔をのぞかせた。
「なにをぐずぐずしているんだ? カーラを待たせたくないだろう?」
 カーラ、とヒラリーは心のなかで繰り返した。彼女の自尊心にも我慢の限度というものがある。そして今、その限度に到達しかかっていた。
 ショーンが、すまない、わかってくれ、という目つきで彼女を見た。
「行ってきてと言ってるじゃないの」ヒラリーは気力を振りしぼって快活な声を出した。「お友達を待たせたらいけないわ」
「きみだってぼくの友達だよ」
 その言葉に、気落ちしていたヒラリーは大いに慰められた。「ええ、わかっているわ。あなただって、わたしにとって特別な人よ。でも、わたしがいけなかったの。お祝いはまたの夜にしましょう。いいわね?」
 ショーンは申し訳なさそうにうなずいた。
「楽しんでくるといいわ。またあとでお話ししましょう」
 彼の友人が再びドアからなかをのぞいた。「おい、一緒に来るのか、来ないのか?」
「今行く」ショーンが答えた。彼は部屋を横切ってヒラリーの両肩に手をかけると、頬にキスをした。「ありがとう」
「気にしなくていいのよ」ヒラリーはショーンが出ていくのを待ってから、キッチンの椅子にぐったりと腰をおろした。膝が震えている。それが失望を隠すために全精力を使い果たしたせいなのか、ショーンに短いキスをされたせいなのか、彼女自身わからなかった。
 置かれている状況からすると、ふたりの関係は厳密にプラトニックなものであり続けなければならない。ヒラリーは最初からそれを受け入れている。ふたりで話しあったことはないけれど、ショーンにしても同じだろう。彼に心を寄せるような危険は冒せない。だが、すでにそれ以上の段階に達している。ショーンに自尊心を傷つけられたのだ。彼はヒラリーを“かわいらしい”と言い、カーラという女性と夜を過ごしに出かけていった。
 そんなことを気に病むのは筋違いだと思いながらも、ヒラリーは気に病まずにはいられなかった。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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