マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクション恋愛小説ロマンス小説

眠りし姫のとまどい

眠りし姫のとまどい


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆1
◆レビューを書く

¥0サンプル
購入する


解説

 領主の父亡きあと、古城でひっそりと暮らすジリアンのもとにある日、サー・ベイアードと名乗る眉目秀麗な男が訪ねてきた。ベイアードは宮廷に仕えるジリアンの姉が彼の兄と結婚したことを知らせ、ひとり領地を守るジリアンの警護に来たと告げる。歓迎されるのが当然で、誰もが彼に従うべきだという態度に彼女はたちまち反感を抱いた。親戚の厚意を装っても騙されないわ。どうせここに来たのも、この豊かな土地を狙ってのことに違いない。彼に心を許すものですか――圧倒的な魅力に気づかぬふりをして、ジリアンは胸に固く誓った。

抄録

 それはジリアンが今まで受けた最高にうれしい賛辞だった。彼女は一瞬、感極まって返事ができなかった。
 ベイアードが立ち上がって彼女の前に来た。ゆらゆら揺れるかがり火の明かりに照らされて顔の傷がいつもよりはっきり見える。「たぶん、ぼくのあだ名はもう耳にしただろう? 別の意味でも流浪の民の血を引いていることを暗示する呼び名を」
「ええ」ジリアンは小声で言った。
「ぼくは修道士ではないが、誓って言うよ。いちばん悪ぶっていたころでさえ田園地帯を歩きまわって女性と出会うたびに、誘惑したことなどない。死んでも誰も悲しまなかった父とは違うんだ。そういう男があとに残る者をどれほど苦しめ、破滅させるかをアルマンもぼくもいやというほど見てきた」
 ジリアンは立ち上がり、彼の目に真実を見つけたくてベイアードを凝視した。「では、フランスでの話も嘘なの? 身の代金が支払われるのを待つあいだ、お兄さまが別の場所で惨めな監禁生活を送っていたのに、あなたは拘束された家の奥さんと戯れていたと聞いたけど」
「もちろん嘘だ。公爵夫人はまだ若く、寂しがっていて、ぼくに魅力を感じていたが、ふたりのあいだにそれ以上のものは何もなかった」ベイアードは褐色の髪をかきむしった。「もしも望めば彼女の恋人になれたかもしれないが、そんな気は起こさなかった。ぼくは捕虜であると同時に公爵から客として扱ってもらったのだから。城を明け渡したことに関して言えば、手紙を受け取ったんだよ。間違いなくジョン王からのものに見えた。兵士たちを失ってまで守る価値はないから開城せよと書いてあった。あの時点では、どこから発せられた命令か、疑問を持たなかった。国王の封印も、直筆の署名も本物だと思った。しかしぼくが宮廷に帰還したとき、ジョン王は手紙を送ったことを認めなかった――それは、悲しいかな、実際に手紙を出さなかったということを意味するわけではない。過ちを隠し、その後に起きた悲劇の責任を逃れようとした可能性もある。なんとか逃げ帰ったぼくの部下たちは、王を守る護衛隊に直ちに入れられたらしい」
「それでもあなたは王に仕えている」
「忠誠を誓ったからだ。道義心からそれを守り続けている。悔やまれるのは、ジョン王がどんな男かを知る前に誓いを立てたことだ……いかに堕落しているかを見極める前にね」ベイアードは首を横に振った。「ぼくは若かったし、どうしても騎士になりたかった。騎士になれるなら悪魔にでも忠誠を誓ったかもしれない」彼はジリアンの両肩をつかみ、熱く語り続けた。「しかし、きみには信じてほしいんだ。ぼくは公爵夫人を誘惑してはいないし、城を明け渡したのも命令に従ったからだ。アルマンがひどい目にあっていたことは本当に知らなかった。しかし、ああ、許してくれ、アルマン! ジョン王がコルフェの兵士たちを飢え死にさせた時点で、わが国の敵はもっと騎士道にもとる連中だと気づくべきだった。誰もがオルモンド公爵のように寛大だと考えてはいけなかったんだ」
 ジリアンはベイアードを落ち着かせるために彼の腕にそっと手をかけ、無言で慰めようとした。しかし指先にたくましい体を感じたとたん、心がうずきだした。間近の彼からは、革と毛織りの衣類から男らしいにおいがする。唇がすぐ目の前に迫っている。
 でも、ベイアードはアデレイドの義理の弟で、わたしを守るためにやってきた。求婚するためではない。誘惑したりキスをしたりするためではない。結婚するためでも、愛するためでも。
 ベイアードがジリアンを引き寄せた。彼女は止めるべきだった……抵抗し……拒み……走り去るべきだ……。
 できなかった。そうしたくなかった。ほしいのは……。
 ふたりの唇が触れ合ったとたん、ジリアンが心のまわりに築いていた壁は粉々にくずれ去った。長いあいだ抑えていた欲望が一気に解き放たれ、必死で否定してきた熱い思いが息を吹き返す。
 ベイアードに抱き締められたい、もう一度情熱を感じたい。そして、彼にも強く求めてほしい。
 ジリアンは夢中で彼にキスをした。将来のことなど気にもせず、男のベッドをあたためることしか頭にないふしだらな女のように。
 この男性のベッドをあたためたい。
 彼女は片手をベイアードの豊かな髪に差し入れ、もう一方の手で太腿に触れた。彼は筋肉を張りつめながら、もう決して離すまいとするかのようにジリアンを抱き締めた。
 彼に愛撫され、欲望と期待が十倍にもふくらむ。ジリアンはあえぎ、求め、何も考えられなくなって、むさぼるようにキスを続けた。
 彼女はかつて大人になったばかりの若者を愛し、愛されたことがあった。幼いころに誰にもかえりみられなかった渇望感からその若者の愛を喜んで受け入れ、進んで純潔をささげた。そして、心も。
 今こうして立派な大人の男性に強く抱き締められながら、ジリアンは体がとろけそうな感覚に襲われた。この欲望の行き着く先はわかっているが、かまわない。彼が何者で、どんな人間で、何をしてきたかなどどうでもいい。重要なのは今キスをしていること、そして彼の情熱に応えていることだ。
 そのとき、誰かがジリアンの肩をつかみ、ベイアードから引き離した。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。