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失われた夏

失われた夏


発行: ハーレクイン
レーベル: ハーレクイン・ロマンス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ダイアナ・ハミルトン(Diana Hamilton)
 イギリスの作家。ロマンチストで、一目で恋に落ち結ばれた夫との間に三人の子供をもうけた。就寝前の子供たちにベッドで読み聞かせるために物語を書きはじめる。ロマンス小説家としてのデビューは1987年、その後数多くの名作を世に送る。2009年5月、ファンや作家仲間に惜しまれつつ亡くなった。

解説

 ■あなたに手ひどく裏切られた私は、あなたの子供をみごもっていた……。
 ■六年前の夏、レストラン兼ホテルのオーナーの娘クローディアは、菜園係のアルバイトの青年アダムに夢中だった。しかし、アダムが年若い継母ヘレンにひそかに言い寄っていたと知り、深く傷ついて心ならずも彼と別れた。その後まもなくクローディアは妊娠していることに気づく。絶望した彼女は父の会計士トニーの申し出を受けて結婚し、娘を産んだあと、心臓の悪い父に代わってホテルを経営してきた。ところがつい最近、トニーとヘレンが交通事故死した結果、二人が愛人同士で、ホテルの財産を奪っていたことが明るみに出る。夫と継母のため、すでにホテルの経営は危うくなっていた。クローディアは父に内緒でホテルを売却しようと決意する。だが、その交渉相手として現れた人物こそ、あの憎いアダムだった!

抄録

 〈ユニコーン〉。この店には架空の動物の名がふさわしい。アダムの運転するジャガーの窓から石造りの小さなパブを見たとき、クローディアは苦々しい気分で思った。この店こそ、六年前にアダムが偽りの愛を告白した場所だった。 「ここ、覚えているだろう?」  クローディアはぼんやりと、車のキーを抜くアダムを見つめた。「あら、どうして?」  もちろん覚えていた。踏みならされた小道からかなり入った、木々に囲まれた谷間の狭い場所にひっそりと立つ小さなパブ。最後にアダムと来てから一度も訪れたことはなかったが、どんなことをきかれても答えられただろう。だが、そんなことを言ってアダムを喜ばせる気はない。  オートバイでこの店に来たのは、あるすばらしい宵のことだった。二人のお金をかき集めて、りんごジュースを一杯ずつと大きなミートパイを一つ注文したのを思い出す。  パイを食べおえると戸外のピクニックベンチに座り、ゆっくりとジュースを味わった。やがてテーブル越しに手を伸ばしたアダムが、親指でそっとクローディアの唇についているジュースを拭い、物憂げな目でじっと見つめながらささやいた。「愛してるよ、クローディア。ぼくはきみが欲しい。夏のあいだずっと、きみのそばを離れないからね」  それを聞いたときは天にも昇る心地だった。いつも一緒にいたいという気持ちは、クローディアも同じだった。  もちろんそれまでにも、腰に手をまわしたり、軽くキスをしたり、自信なげに胸のふくらみを愛撫したりしたことはある。だが、きみが欲しいと告白したからには、アダムがすべてを求めているのは明らかだ。  ファージングズ・ホールに戻るあいだ、二人はあまり話をしなかった。オートバイの荷台にまたがってアダムの体に腕を巻きつけているとき、クローディアは夢見心地という言葉を実感した。空にはもう月が出ていた。クローディアはいつものように、トレーラーハウスに戻ってコーヒーをいれるのだろうと思っていた。だがオートバイを止めたアダムは、クローディアの手を引いてトレーラーハウスから遠ざかった。  行き先はきかなかった。きく必要などない。生涯を託す恋人に初めてすべてを与えるのは、月光に照らされたあの洞窟だとクローディアにはわかっていた。  だがアダムに生涯を託すことにはならなかったし、ヘレンから彼の本心を聞いた瞬間、愛は滅びた。この店やあの夏のことを忘れられないでいることをアダムに知られるくらいなら、死んだほうがましだ。  店構えは小さいが、〈ユニコーン〉は素朴でおいしい手作り料理を出すことで知られている。二人は静かな窓際の小部屋《アルコーブ》に席を取った。アダムがメニューを手渡してくれたが、クローディアはそれを開きもせずにテーブルに置いた。「グリーンサラダとコーヒーにするわ」何を食べても胃が受け付けそうもないときに、それ以外のものを注文するのはばかげているし、もったいない。  黒い眉が皮肉っぽくつり上がった。「だからそんなにやせているんだな。レタスをブラックコーヒーで流し込んで生きているのかい?」  すっかり忘れていたわけではなく、ふっくらとしていた十八歳のころと、見る影もなくやせたいまを比べられる程度の記憶はあったとみえる。クローディアの胸に激しい喜びがわき上がった。きみのこともファージングズ・ホールのことも、この六年間一度だって思い出したことはないと言わんばかりだったアダムが、それを否定したも同然なのだから。  だが、彼が超一流の嘘つきだということを忘れてはならない。 「ここに来たのは仕事の話をするためでしょ。そんなつまらないことを話すためじゃないわ」ちょうど料理が届いたので、ナプキンを膝に広げながらクローディアは言った。 「つまらないこと? 昔は、個人的な話ができるようになったとき、すべてがうまくいきはじめたものだがね。つまらないなんてとんでもない」何をほのめかしているのかわかったが、クローディアは無視した。「あの子──きみの娘さんのことだが、なんて呼んでいるんだい?」 「ロージーよ」愛する大事な娘のことは、この男にだけは話したくなかったが、答えないわけにはいかない。 「かわいい名前だ。ロージー・フェイベルか。フェイベル? なるほど、思い出したぞ。ぼくはきみのご主人を知っているね?」  クローディアはため息をついた。あなたには関係ないことよと言いそうになったが、プライドより実益を取った。父とロージーの将来は、ファージングズ・ホールをいかに高く売るかにかかっている。いつまでもこの男に無礼な態度をとっていたら、せっかくのチャンスを棒に振ることになる。  クローディアは、砂糖もクリームも入れていないコーヒーをゆっくりとかき混ぜ、忍耐力をかき集めた。「そうかもしれないわ」彼女はとりあえずそう答え、いれたてのコーヒーをさもおいしそうに飲んだ。だが、そんなことでだまされるようなアダムでない。まばたきもせずに自分を見つめる彼の目を見れば、すぐにわかる。
 *この続きは製品版でお楽しみください。

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