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美しい悲劇

美しい悲劇


発行: ハーレクイン
レーベル: ハーレクイン・セレクト
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 リンダ・ハワード(Linda Howard)
 数々の受賞歴を誇る、世界中で大人気の作家。栄えあるNYタイムズやUSAトゥデイのベストセラーリストにもしばしば顔を出す。読むにしろ書くにしろ、本は彼女の人生において重要な役割を果たしているという。読み始めはマーガレット・ミッチェルの作品。それ以後、広く読書に熱中するようになった。少女のころから書くことが好きだったリンダの作家デビューは三十歳のとき。現在はアメリカの作家大会や授賞式の席に常連の人気作家で、サイン会にもひっぱりだこである。とりわけ、彼女の描くヒーローが魅力的だというファンが多い。現在、生まれ故郷のアラバマ州に夫とともに住んでいる。

解説

 故郷テキサスに戻ってきたキャサリンは、亡き父の牧場がすっかり様変わりしていることに驚いた。牧場監督のルールが我が物顔で采配を振り、競走馬の飼育まで手がけている。長く牧場を離れていたとはいえ、オーナーの私には報告すら来ていない。怒りが頭をもたげる一方、ほろ苦い思い出が胸によみがえった。ルール――彼はいつだって特別な存在だった。今も忘れられない17歳のあの日、彼に抱かれたまま、時間が止まればいいと思っていた……。

 ■ファン待望、リンダ・ハワードの1984年の名作をお届けします。強引な初恋の男性との再会物語です。

抄録

 なんなの、この気持は? いやな感じ。キャサリンが部屋を出ようとしたとき、不意にルールが目を開けて彼女を見つめた。「キャット」まだ眠りから覚めていない彼の声はかすれている。「おいで」
 足は部屋の奥へ向かっていくが、キャサリンはいぶかった。なぜわたしは眠そうなあの声にこうも従順なのだろう? ルールは床に足を下ろして立ち上がり、キャサリンの手首をつかんでそばへ引き寄せた。何をするつもりなの? 答えが出る前に、彼の温かい唇が口に触れた。その唇はむさぼるように口の上をすべり、抵抗するなと語りかける。望みもしない歓喜の波があとからあとから背筋をのぼり、キャサリンは唇を開いて彼のキスを受け入れた。
 「ベッドへ行こう」ルールはキャサリンの口に唇を寄せてささやいた。
 一瞬キャサリンは力を抜いて彼にもたれかかった。体はルールに近づきたがっている。だが、そこではっと我に返って目を開き、遅ればせながら彼の広い肩を押しやった。
 「ちょっと待って! わたしはそんな――」
 「ぼくはもうずいぶん待った」ルールはキャサリンの言葉をさえぎり、再び彼女の唇に軽くキスをした。
 「まあ、頑固ね! ついでにもっと待っていればいいわ!」
 ルールは苦笑し、キャサリンの腰に手をすべらせて自分の腰にぴったり引き寄せた。こうすると、キャサリンは彼の体が燃えているのを感じ取る。「それでこそぼくのキャットだ。最後までぼくと闘うがいい。さあ、ベッドに入りなさい。ぼくはその前にすることがたくさんある」
 急にさめた口をきくとはどういうわけ? キャサリンは戸惑い、ぼんやり部屋を出て初めて気がついた。そうよ。考えてみれば、どういうわけかわかるじゃないの。ルールはしたいことを我慢するような人ではない。牧場がからむのでなければ。そうですとも。キャサリンは胸の内で面白そうに独り言を言った。彼は仕事をしなくてはならないのよ。ほかのことは後回しでいいんだわ。ええ、それで結構。わたしには好都合よ。
 ローナにおやすみを言おうとキッチンへ行くと、彼女はちょうど自分の住まいに戻るところだった。住まいは家の裏手にあり、部屋二つと浴室がある。ルールがローナを雇ったとき、彼女に使わせるためにわざわざ改装させたのだ。キッチンを出て階段をのぼったときは、脚が痛くて一段のぼるごとに立ち止まりたくなった。もう一度のんびり湯につかると多少は筋肉がほぐれたが、塗り薬をつけるのは億劫で、朝になったら後悔するだろうと思いながらもやめてしまった。
 カーテンを開けると月光が部屋の中に流れ込む。キャサリンは隅にひっそり置いてあるロッキングチェアの背にバスローブをかけ、明かりを消して使い慣れたベッドにもぐり込んだ。自分の家に帰ってきたのだ、ここがわたしの家なのだ、という実感がわく。これほど心が安らぎ、満たされるところはこの地上のどこにもない。これほどゆったりした気持になれるところも。
 ところが、ゆったりしようとどうしようと眠れない。右へ左へ寝返りを打つと同時に、心は止めようもなくルールのもとへ返っていく。ずいぶん待った、ですって? 生来傲慢な彼だが、どこまで傲慢なのだろう? わたしがおとなしくベッドに入って彼を待っていると思っているとしたら……。
 彼はそのつもりだったのだろうか? キャサリンはぱっと目を開けた。そんなはずはない。廊下を隔ててモニカもリッキーも寝ているというのに。ルールはなんと言っただろう? 正確に思い出してみたい。たしか、“ベッドに入りなさい。ぼくはまだしばらく寝られないから”といったようなことを口にしていた。それとわたしと、どういう関係があるのだろうか? 何も。関係なんて何もない。あとで……あとで彼がわたしのところへ来るというのでなければ。
 もちろん、来るわけはない。わたしはそんなことをさせないし、彼はそれを知っている。彼とて、騒ぎを起こしたくはないだろう。キャサリンは再び目を閉じた。ルールはほしいものを得るために危険を冒すのではないか、という変な期待がつきまとう。そんな期待に心を奪われてはならない。
 うとうとしていると、突然何かを感じて目が覚めた。部屋の中に誰かいる。すばやく振り返ると、ベッドの脇に男性が立っていた。ちょうどシャツを脱ぎかけている。息が詰まって心臓が早鐘を打ち、体が熱い。不意に、薄いネグリジェが体を縛りつけているような気がしてきた。息を吸い込み、何か言わなくてはと必死になっているうちに、男はシャツを脱いでかたわらに放り投げた。ほの白い月の光が筋肉で締まった胴部を照らし出しているが、顔は陰になっていて見えない。しかし、キャサリンにはわかった。この姿、このにおい、このぬくもりは、彼に違いない。あの暑い夏の日のイメージがまざまざとよみがえる。灼熱の太陽を背に、自分におおいかぶさってくる彼のシルエットが。たちまち恐怖感と恋しさとが、妙に混ざり合って胸を満たした。やはり、彼は思いきった行動に出たのだ。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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