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オリンポスの咎人 アムン

オリンポスの咎人 アムン


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks シリーズ: オリンポスの咎人
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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解説

 アムンは体内に取り込まれた無数の魔物の声に正気を失いかけていた。他人の“秘密”をのぞく力を持つ彼は数週間前、仲間を助けるために地獄に赴き、邪悪な思考を取り込みすぎたのだ。その重荷を仲間に背負わせぬよう、彼は固く口を閉ざして一人苦痛に耐え続けている。ところがそこへ、謎めいた金髪の女が現れたとたん、悪しき声が静まり返った。アムンは安らぎを与えてくれた彼女に強い結びつきを感じるが、彼女の頭から飛び込んできた秘密に恐怖をおぼえる。そんなことがありうるだろうか? 彼女がかつて仲間を殺した敵だとは。

抄録

 最初、彼はヘイディの言葉にもキスにも反応を見せなかった。返事はなく、もっと彼女を近づけようとするそぶりも見せない。と、その体に力が入り、手がぎゅっとヘイディの手を握りしめた。そしてやっと顔を傾け、口を開いた。ヘイディを受け入れるだけでなく、さらに引き寄せるために。
 ヘイディはうめき声をあげ、彼の唇の中に舌を入れた。そしてふいに体を貫いた欲望にはっとした。彼の味わいは秘密めいたドラッグのように香ばしく、誘惑し、引き寄せ……反応を求めた。ヘイディは反応する自分を否定できなかった。息は荒く、胸の先端は硬くなり、全身の細胞がたまらなく甘い炎となって燃えあがる。
 もっと、とヘイディは思った。
 舌と舌が出合い、円を描き、踊り、せめぎ合う。ぬくもりが広がり、強くなっていく。やがてマイカがうめき声をあげて体を寄せ、まるで口で愛し合っているかのように舌を出し入れしはじめた。
 マイカにキスしたことは何度かあったけれど、そのたびにヘイディは失望させられた。今度は失望はなかった。あるのは体を揺るがせる興奮とぼうっとするほどの喜びだ。ヘイディの手が勝手に動いて彼の髪をつかんだ。シルクのようなやわらかい髪は繊細そのものだ。
 (もっと)今度はマイカがそう言った。ヘイディの頭の中にその一言がうめくように響いた。
 「ええ、もちろんよ」もっと続けたい。終わらせたくない。心の中にはいまわしい記憶しか残っていなくても、彼のエキゾチックな香りを味わっていると過去のすべてを忘れ、現在は快感の戦慄に塗りつぶされ、未来が希望に満ちたものに思えてくる。最高だ。「あなたを傷つけたくない」
 (おれが傷つくとしたら途中でやめたときだけだ)キスがアドレナリンを呼び起こしたらしく、マイカは彼女を抱きあげる力を取り戻し、気がついたときにはヘイディは彼の膝にまたがっていた。
 うずく欲望の中心に長く硬いものがあたるのを感じてヘイディは息をのんだ。最高? もうそんな言葉では足りない。まるで大地が揺れるかのようだ。自分でも止められず、彼女は背中を丸めては伸ばして体を彼にこすりつけた。そのたびに二人の体はぶつかり、結びつき、ヘイディは欲望のうめきをあげた。快感が熱い波となって体を駆け抜け、神経の先端が燃えあがった。
 (もっとだ)
 「ええ」ヘイディの声は欲望のささやきでしかなかった。
 マイカの片手がジーンズのウエストの中に入ってヒップを包み込んだ。肌と肌が触れ合い、所有欲を熱く刻み込む。もう片方の手は背筋を這いあがってうなじをつかんだ。次の瞬間、マイカはうつぶせになって彼女をベッドに押しつけた。彼の体重がずしりとヘイディにのしかかった。
 唇は一瞬たりとも離れなかった。何度も舌が触れ合い、欲望をかきたてると同時に胸を苦しませもするエクスタシーを味わわせた。マイカの腰がゆっくりと動いて彼女のうずきの中心にあたり、ヒップを包む手がその体を引き寄せ、高まりの上を上下に滑らせた。燃えあがるような摩擦がたまらなく甘い。こんな感覚は初めてだとヘイディは思った。
 (こんなことをしてる場合じゃない)
 状況や身の危険を考えるにはもう手遅れだ。「あなたがほしい」
 (わかった)
 マイカがあっけなく納得したので、彼女はもう少しで笑いだしそうになった。でも今は一つのことしか頭にない。それはクライマックスだ。ヘイディは血が出るほど強く彼の背中に爪を突き立てた。反応する体を抑え込もうとしたが、できなかった。うずきがすべてをのみ込み、突き動かし、理性を押しやった。
 「あなたが……」ヘイディは彼のウエストに脚を絡めて足首を結び合わせた。マイカの手が胸に触れ、指が先端を転がす。シャツとブラジャーを通しても彼のぬくもりが感じ取れる。燃えるような烙印だ。「ほしい」
 (ああ、わかってる)

 アムンは我を忘れてしまった。
 ヘイディの首に手をかけたときには骨をまっぷたつにしようと思っていた。彼女はこちらを見つめていた。まつげは長く、唇はやわらかく豊かで、額にはピンク色の髪が一筋かかっている。彼を救う話をしていたとき……ヘイディの顔に暗いものがきざした。正体はわからないが、見るのがつらい何かだ。
 ヘイディはこちらに体を寄せ、彼の苦痛が自分のせいであるかのように謝った。アムンは傷のことなど忘れてしまった。傷だけでなく、何もかも。ヘイディの唇を受け入れることしかできなくなった。そして彼女の息を吸い込んだとたん、受け入れることすら無理だとわかった。ヘイディを自分のものにしたい。すべてを奪い取りたい。そしてすべてを与えたい。
 その欲望の意味は理解できなかったし、今もわからないが、考え込む余裕などなかった。舌が絡まった瞬間に体は嵐と化し、ヘイディが彼をつなぎとめるただ一つの錨となった。
 心に取り込んだすべての魔物――多くの声、思念、衝動が、底から浮かびあがろうと必死にもがきだした。魔物どもはヘイディを好まず、一度は隠れようとしたが、今は逃げようとして必死にあがいている。動揺し恐れているのが感じ取れたが、それでも彼と同じように否応なくヘイディに引き寄せられている。そして抵抗している。
 彼は抵抗しなかった。あっさりと負けた。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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