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泣きやむまで抱きしめて

泣きやむまで抱きしめて


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 シャロン・サラ(Sharon Sala)
 強く気高い正義のヒーローを好んで描き、業界のみならず読者からも絶大な賞賛を得る実力派作家。息子と娘、それに孫が四人いる。“愛も含め、持つ者は与えねばならない。与えれば百倍になって返ってくる”が信条。ダイナ・マコール名義の著書も出版されている。

解説

 亡き父の遺言状はマリアにとってあまりに衝撃的なものだった。父ともほかの姉妹とも血のつながりはなく、それぞれの複雑な生い立ちが明らかになったのだ。マリアは動揺しつつも、過去と向き合う決意をする。実の母が何者かに殺されていたなんて──マリアは故郷に戻り、地元の刑事ボディの協力を仰いで母の軌跡をたどった。次々と現れる真実にマリアが打ちのめされるたび、ボディは彼女を励まし、ときには情熱的に癒やした。だが、2人の間に強い絆が生まれかけたとき、運命はまたもマリアに残酷な試練を与えようとしていた……。

抄録

 数分後、ボディは報告書を副署長の机に置いてエレベーターへ向かった。食事をしてぐっすり眠ること以外何も考えられないほど、体が疲れきっていた。
 ところが地上へ向かうあいだにマリア・スレイドのことが頭に浮かび、車に乗りこむやいなや、自宅ではなしに彼女が泊まっているホテルへ車を走らせていた。

 電話が鳴っている。マリアはベッドの上で体をずらして館内電話に手をのばしかけたが、鳴っているのは携帯電話だと気づいた。まだいくぶん意識が▼朦朧《もうろう》としている状態で日誌の下に転がっていた携帯を手に取り、発信者名を確認せずに応答した。
 「もしもし?」
 「ぼくだ」ボディの声だった。「眠ってた?」
 「ええ」
 「申し訳ない。それなら――」
 「切らないで。どうせもう目は覚めてしまったわ」マリアはぴしゃりと言った。「何かあったの?」
 「その口ぶりからすると、眠気はすっかり吹き飛んでしまったみたいだね」
 「ええ、おかげさまで」マリアはあくびをして、手ぐしで髪をすいた。
 「食事はした?」
 「いいえ」
 「ピザがあるんだ」
 おなかがぐうと鳴って、マリアは時計に目をやった。「いいわね。でもいまから着替えをして外へ出る気はしないわ」
 「それならドアをあけてぼくをなかに入れてくれないか。そうすれば着替えなくてすむ」
 マリアの視線がドアに飛んだ。
 「いま、部屋の外にいるの?」
 「見てごらん」
 上掛けをはねのけて駆け足で部屋を横切り、のぞき穴に目をあてた。うそではなかった。ピザの箱を持ってドアの前に立っているのはボディだ。マリアはドアをあけた。
 「具は何?」
 「ソーセージとマッシュルーム」
 「入ってよろしい」もったいをつけた口調で告げた。
 うれしさを隠そうともせずに、ボディは客室に足を踏み入れた。ピザの箱を置き、上着のポケットから缶飲料を取りだす。
 「廊下の自動販売機でペプシを買ってきた」
 「あなたって優秀なボーイスカウトなのね」
 ボディは笑った。“備えあれ”というボーイスカウトの標語はいまもしっかりと身についている。
 「意外に気がきくだろう。それで、どこで食べる?」
 マリアは室内を見渡した。机の前に背もたれがまっすぐの椅子がひとつと、窓際にオットマンつきの安楽椅子があるだけだ。
 「ベッドは?」
 「それがいい」片方ずつブーツを脱ぎ、上着の内ポケットから紙ナプキンをひとつかみ取りだすと、ボディはそれをベッドにほうって上着を椅子の背にかけた。
 肩かけ式のホルスターと、そこに収められた拳銃にマリアの目は吸い寄せられた。
 「ああ、失礼」ボディはホルスターをはずして上着の横にかけた。「どうぞお先に」そう言って、手ぶりでベッドを示す。
 ベッドカバーを引っ張ってマットレスをおおうと、マリアはその上に乗って、子どものようにぺたりとすわった。
 ピザの箱を手に取ったボディは、ふたをあけてふたりのあいだに置くと、冷えたペプシを彼女に手渡してから、ベッドの足もとに腰をおろして飲み物を置いた。
 「父の受け売りだが、“ここに用意されたものを祝福し、わたしたちの体を支える糧としてください”さあ、がっつりいって」
 マリアは口もとをほころばせた。この男のノリの軽さか、ピザとコーラか、どちらにより感謝すべきか自分でも判断がつかない。とにかく言われたとおりにピザの最初のひと切れを手に取った。
 チーズはまだ熱く糸を引いていて、ソーセージはこうばしいにおいがする。いまにも落ちそうなマッシュルームを指でつまんで口にほうりこんでから、大きくかぶりついた。
 「うわ、何これ……おいしすぎる」親指をなめながらつぶやいた。
 ボディはうなずいて、手に取ったスライスにかぶりついた。
 しばらくのあいだ、会話はほとんど交わされなかった。四切れめを前にして、ボディはひと息ついた。
 「それじゃ、ぼくがここにいてもかまわないんだね。つまり……こんなふうにとつぜん押しかけてきても不気味だとは思わない?」
 マリアは顔をあげた。「ええ、べつに不気味だとは思わないわ」
 もろ手をあげての大歓迎でないのは残念だが、欲を出せばきりがないとボディは自分をいさめた。
 「よかった」
 「でも参考のために教えて。なぜ来たの?」
 すべてを正直に打ち明けたらどんな反応が返ってくるかわからない。とりあえず一部だけを話すことにした。
 「きみに好感を抱いてるから。きみのことが気がかりだから。ひとりで食べたくなかったから。どれでも好きなのを選んでくれ」
 正体不明のうずきをマリアは胸の奥に感じた。
 「全部を選ぶわ」低い声で言って、すぐに目をそらした。
 「うまい答えだ」ボディは軽く受けて大きく息を吸い、キスの誘惑に負けてしまわないようにさらにひと口食べた。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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