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遠い絆

遠い絆


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ロビン・ドナルド(Robyn Donald)
 ニュージーランド北部の牧場主の家に、一男五女の長女として生まれた。十五歳で師範学校に学び、十九歳で結婚、同時に小学校の教師となる。子育てを終えて一時休んでいた教職に戻り、かたわら執筆を始めた。蘭の花が咲き、キウイやオレンジの実る美しい北部の村に住む。

解説

 ■わたしたちが惹かれ合うのは、遠い絆を本能的に感じるから?それとも……。
 ■「レシア、あの人を見て!まるで、あなたの双子のお兄さんだわ!」友人に言われて振り返ったレシアは仰天した。無理もない。野外オペラを鑑賞しに来た大勢の人々のなかに、性別こそ違うが自分とそっくりの顔を見つけたのだから。その男性、キーン・パジェットもレシアを見て驚いたようだった。互いに名刺を交換してその場は別れたものの、彼のことはレシアの頭から離れなかった。わたしと同じ顔をしている男性が、この世にいるなんて。やがてキーンから昼食の誘いを受け、話をしているうちに、レシアは彼に強く惹かれていく自分を意識した。だめよ。二度と恋はしないと誓ったはずじゃない。過去のつらい経験から、彼女は恋をすることに臆病になっていた。

抄録

「でも家族だとしたら……?」
 首を横に振るレシアに、キーンは探るような視線を向けた。「そうか。ぼくもきみと血のつながりがあるとは思えないんだ」彼女に口を開く間を与えずに、なおも彼は言った。「教えてくれ。きみは建設現場で会う男には、誰でも釘をまっすぐに打ちこめるところを見せつけるのか?」
「どうしようもない石頭にだけよ」
「どうやらきみの業界では、性差別がまだまだ残っているようだな」
「建設現場に限ったことじゃないわ。女は生まれつき技術的なことには向かないって信じる男性は、大勢いるわよ。もちろん建築家を信用しない施工主だってたくさんいるし、本当に手に負えない頑固者もいるわ」
「でもきみはちゃんと切り抜けている」
「わたしはいい仕事をしているわ。頑固な男の人でも、ちょっと知性を持ち合わせていれば──たいていの人が持っているけれど──わりあい早く腕を認めてくれるわ。そうでない人たちには、泣かされるけど。ねえ、あなたの会社ではどうなの? 女性の管理職はいる?」
「いるよ。その女性が仕事ができるかどうかだけが問題なんだ」
「もし、彼女の子供が病気になったら?」
「家で仕事ができるようにする場合もあるし、会社から看護婦を派遣することもある。うちではちゃんとシステムができていて、事情に応じてどうするか決めるんだ」
「とても進んでいるのね」
 キーンは肩をすくめた。「ぼくの事業が利益を上げているのも、現実に即したやり方で対応しているからさ。四十年前のやり方じゃだめだ。働いている女性のために企業は働きやすい環境を整え、要望をかなえてやる必要がある。それは男性社員についても同じことさ。社員が家族のことより会社の利益を優先するのを期待されていた時代は過去のものだよ。ぼく自身、長時間労働はしない。社員にもそんな犠牲を払ってもらおうとは夢にも思わない」
「それで効率が落ちたりはしないの?」
「うちに関するかぎり、一日の労働時間が八、九時間を超えるようなら働きすぎだ。その場合は別の人間を雇って余分な仕事を回すけど、能力不足の場合もある。そんなときは指導する。もちろん進歩しない者は長続きしないけどね」
 食事の注文をしたあと、話題は仕事のことが中心になり、特にキーンの仕事のことで話が盛り上がった。彼はたくみな話術でレシアを笑わせ、仕事を持つ者として彼女を対等に扱った。彼と話すうちに、レシアは彼の鋭い知性の奥にひそむ思いやりと理解をかいま見たような気がした。
 キーンの会社のオゾン発生器が話題に上ると、レシアは言った。「フィルターには仕事上の興味があるわ。でもあなたの会社については、友人が送ってくれた記事を読んだだけ」
「友人って、ぼくたちが野外オペラの会場で顔を合わせたときアイスクリームを持ってきたやつか  い?」ほほ笑みを浮かべた顔が、一変して挑むような顔つきになった。「きみにキスした男さ」
「そんなことしたかしら?」レシアも挑戦的な態度に出た。「覚えていないわ。それに、ピーターじゃないわ。アンドリアといって、一緒にいた赤毛の背の高い女性がファクシミリで送ってくれたのよ」
「覚えている。とても魅力的だったな。ああいう女性は、八十代になっても元気で丈夫だろうな」彼はゆっくりとつけ加えた。「アイスクリームを渡した男は、きみの恋人?」
 レシアはむっとしたが穏やかに答えた。「そのことも探偵さんが調査ずみかと思っていたわ」
「報告によればきみたちは恋人同士ではない」深みのある声には、はっきりと荒々しさが感じられた。「報告は間違いかな?」
「間違いじゃないわ」レシアはしぶしぶ答えた。
「だが彼は、恋人になりたがっている?」
「あのときあなたが連れていた女性は、恋人?」言ったとたん、レシアは後悔した。彼女はあわててつけ足した。「別に答えなくていいわ。わたしも言うつもりはないから……」
 キーンはほほ笑み、口ごもるレシアをさえぎった。「違う。彼女は恋人じゃない。恋人だったこともない」
「わたし、このことはこれ以上話したくないわ」
 キーンの瞳が一瞬、激しい怒りでひらめいたように見えたが、彼はうなずいた。「いいだろう。何を話題にする?」
「あなたのオゾン発生器のこと。どんなふうに作っているのか話してちょうだい」いまはこれしか思いつかない。
 キーンは愉快そうに笑みを浮かべた。「あれはプールや温水浴槽の水をきれいにする。水生植物の病原菌もとり除くから、水耕栽培にかなり使われている。それに飲み水のバクテリアや鉄分、その他の汚染物質も濾過するんだ」
「その記事を書いた記者は、あなたの会社の製品も経営戦略も絶賛していたわ」
「ぼく一人でやっているわけじゃない。営業部がいい仕事をしているんだ」
「調査部も製作部もね。輸出もしているのね?」
「生産規模が倍になりつつある」彼の口調に冷淡な響きが戻ってきた。「食事をしながら商売の話をさせるのかい?」
 それまでうつむき加減になっていたレシアははっと顔を上げ、彼をまっすぐに見た。「ごめんなさい」



*この続きは製品版でお楽しみください。

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