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忘却のかなたの楽園 誘惑された花嫁 I

忘却のかなたの楽園 誘惑された花嫁 I


発行: ハーレクイン
レーベル: ハーレクイン・ディザイア シリーズ: 誘惑された花嫁
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆2
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著者プロフィール

 マヤ・バンクス(Maya Banks)
 幼いころからロマンスを愛読し、作家になることを夢見ていた。十代になると毎日ノートを持ち歩き、想像のふくらむまま過激な愛と情熱の物語を書き続けるようになる。現在の話はそのときのものほど過激ではないが、ロマンティックという点では引けを取らない。現在は夫と三人の子供とともにテキサスで暮らしている。狩猟や釣り、ポーカーを好む。

解説

 「どこかでお会いしましたか?」愛しい男性の心ない言葉を聞いた瞬間、ブライアニーは屈辱のあまり、彼の頬を平手打ちしていた。5カ月前、島を購入したいと訪れた会社社長のラファエルと彼女はまたたく間に恋におち、夢のような時を過ごした。だが、契約書を手に本社に戻ったはずの彼から、その後連絡はなかった。まさか、ラファエルは島を手に入れるために私を誘惑しただけ?妊娠に気づいた彼女は、必死に悪い想像を打ち消し、彼を待ち続けた。そして、やっと意を決して彼に会いに来たのに……。続くラファエルの告白に、ブライアニーは耳を疑った。「事故の後遺症で、君についての記憶をなくしたのかもしれない」

 ■人気絶頂マヤ・バンクスが描くミニシリーズ4部作、〈誘惑された花嫁〉がスタート! 魅惑の大富豪たちの恋とその代償は――?

抄録

 ブライアニーはうつむいてフォークを置き、それから再び顔を上げた。驚くことに彼女の目には涙がたまっていた。ラファエルの喉は詰まった。なんてことだ。彼女を二度と動揺させたくなかったのに。
「わたしがどれほどつらい思いをしているのかわかる?」ブライアニーの声はかすれていた。「わたしを手ひどく裏切った男性と対決するつもりでわたしはここに来たわ。あのときはあなたときっぱり別れることしか考えていなかった。それなのにあなたは記憶をなくしたなんて言い出したのよ。いったいどうすればいいの? わたしはあなたに裏切られたわけじゃないかもしれない。でもそう考えるのは死ぬほど怖いわ。また裏切られるんじゃないかって疑わずにはいられないから。とにかく、わたしはあなたが記憶を取り戻すまでどうすることもできない。だけど、もううんざりなの」
 ラファエルはただ黙って彼女を見つめることしかできなかった。
「でもだからといって逃げ出すわけにはいかない。わたしはあなたが逃げ出したと思って責めていたんですもの。それに、心のどこかで明日にでもあなたの記憶が戻り、わたしを愛してくれていたことを思い出すかもしれないと思ってしまうのよ」
 ブライアニーは皿を押しやって顔をうつむけ、話を続けた。「だけど希望にしがみついていたら、あなたに裏切られたと思っていたころよりも、もっと愚かなあやまちを犯してしまうかもしれない。今はおなかの赤ちゃんの心配もしなければいけないのに」
 ラファエルは気づくと、ブライアニーを抱き寄せていた。彼女に触れて慰めを与えずにはいられなかった。彼女の顔に浮かんだ苦悩があまりに生々しかったからだ。
 彼はブライアニーの髪のにおいを吸い込み、それが記憶を呼び覚ましてくれないことにがっかりした。嗅覚は過去を思い出す最も強い引き金になるのではなかったか?
 ブライアニーは彼の腕の中で身をこわばらせていたが、少しずつ緊張を解いていった。手を彼の胸に置き、頬を肩にのせている。
 ラファエルは彼女の頭のてっぺんにキスすると、髪に唇を滑らせた。こうするのが何よりも自然なことに思えた。いつもの彼だったらこんな親密なしぐさは絶対にしない。だが、体がずきずきうずくほどブライアニーをやさしく慰めたかった。
「悪かった」ラファエルは心からそう言った。彼のせいでブライアニーが傷ついたのだと思うと、なんともやりきれなかった。
「しばらくこうしていて」ブライアニーはささやいた。「何も言わずに」
 ラファエルは彼女の髪をそっと撫でながら、しばらくそのままでいた。沈黙が流れ、ラファエルはそれがどうにも落ち着かなかった。彼の肩にブライアニーのやわらかな髪がかかり、脇腹には少しばかりふくらんだ彼女のおなかが触れている。
 これは現実なのだろうか? 現実だとしたら、なぜぼくは全速力で逃げ出そうとしないのだろうか?
 終生の誓いを交わすことに恐怖を感じているわけではないし、過去に苦い経験をして、女性に傷つけられることを恐れているわけでもない。
 だが、これまでひとりの女性と深いきずなを結んだことはなかった。そういう関係におちいった男は思いのままに生きていくことはできない。ひとりでは物事を決められなくなるからだ。ラファエルは誰にも相談せずに決断することに慣れていた。
 三人の友人たちと協力し合ってビジネスを成功させたのも、ただのまぐれではなかった。膨大な時間を費やしたのだ。毎晩夕食までに家に帰れるか心配していたら、それほど多くの時間を仕事にかけられなかっただろう。
 ゆっくり休むひまはほとんどなかったが、それでも年に一度はライアンとデヴォンとキャムに会い、ゴルフをし、酒を飲み、決まった女性がいたらできないようなこともしてきた。
 要するに、そういうことと引き替えにしてもいいと思わせる女性がいなかったのだ。たった四週間のうちにそう思わせる女性と出会ったなんてどうにも信じられなかった。
 とはいえ、どんなことにも“ひょっとしたら”ということはありえる。
 ラファエルは腕の中で安心しきったように体を丸めている女性を見つめた。ブライアニーの何かが彼を惹きつけてやまないのだ。これほどまでの欲望を抱いたことは今までない。いつもだったらそんな自分にぞっとするだろう。いや、ぞっとするべきなのだ。
 ラファエルは気づくと、彼女が話したことをすべて思い出すよう祈っていた。ふいにそれがとてつもなく魅力的なことに思えてきたからだ。
 そして、そんな自分におびえるのだった。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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