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無口な求愛

無口な求愛


発行: ハーレクイン
レーベル: ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ジュリア・ジャスティス(Julia Justiss)
 小学三年生のときから物語を書きはじめ、大学では詩集を出版し、卒業後は保険会社やチュニジアのアメリカ大使館で編集者として働いていた。海軍士官の夫について十二年のあいだに七回の引っ越しを経験したあと、現在は米テキサス州東部のパイニー・ウッズに落ち着き、高校でフランス語を教えている。1997年にアメリカロマンス作家協会ゴールデン・ハート賞を受賞。夫と三人の子供、二匹の犬とジョージアン・スタイルの屋敷に住む。

解説

 華やかな社交界に憧れる男爵令嬢のアマンダは、高名な侯爵の親戚を屋敷に滞在させることになり、期待に胸をときめかせて客を待っていた。だがそこへ現れたのは、薄汚れたごろつきのような男。アマンダは思わず言葉を失うが、数日後、朝食の席ででくわした彼を見てさらに驚いた。そこには、ハンサムな顔立ちの颯爽とした紳士がいたのだ。彼――グレヴィルに魅力たっぷりの笑みを投げかけられ、アマンダの心臓は早鐘のように打ち始める。でも謎めいた彼に惹かれてはならない。私の夢見てきた社交界デビューはもう目の前なのだから。

 ■理想の花婿、理想の結婚を思い描いて生きてきたアマンダ。ところがデビュー前の巡り合いが彼女の心を迷わせます。人気作家ジュリア・ジャスティスの約2年ぶりとなる、貴重な新作です。

抄録

 興味と腹立ちの板ばさみになりつつ、グレヴィルはそっけなく言った。「あなたはミス・ホルトンに付き添いが必要だと思っているかもしれないが、僕はこんな屋敷のすぐそばで彼女に襲いかかるつもりはない――あるいは、ほかのどんな場所でも。僕がここに着いたときの格好を見たら、心配するのも無理はないが、これでも僕は紳士としての道義をわきまえている」
 それに、まだ女性に襲いかかるほどの体力もない。なまめかしいアマンダが相手なら、力の限界を試してみてもかまわないが。
 だが、おそらく言いすぎたようだ。グレヴィルがどう弁解しようか考えあぐねていると、アマンダが口をひらいた。「あなたには謝らなければなりません。あなたの良心を信用していないように見えたのなら、ごめんなさい。でも、いとこは微妙な年ごろだということをわかってほしいんです。もう子どもではないけれど、デビューまでにはまだ一年か、それ以上あるわ。今朝あなたが言ったとおり、そうした立場の若い女性は評判を傷つけないように、とにかく注意しなければならないんですもの。だから、私にはアルシーアを守る義務があるんです――たとえ彼女が望んでいなくても」
 グレヴィルはうなずいた。「よくわかりました。しかし正直なところ、ミス・ホルトンは社交界にデビューしたがっているようには見えないが」
 アマンダは顔をしかめた。「本当に。いまのままでは、とてもデビューするつもりがあるとは思えないわ。だけど、言いたいのはそれだけじゃないの。あなたの……格好に驚いて、父のお客さまを温かくお迎えしなかったことも悪かったわ。せめてもの償いに、あなたがここに滞在するあいだは精いっぱいおもてなしするわ」
 彼女の口から謝罪の言葉を聞くとは、夢にも思っていなかった。グレヴィルの考えでは、美人というのはたいてい自分のことで頭がいっぱいで、自分より身分の低い者の気持ちなどおかまいなしなのだ。
 心になんらかの傷を負っているせいで――母を亡くしたばかりだから――感傷的になっているのだろうか。いずれにしても、アマンダの見せた思いやりは、彼女が美しいだけでなく心やさしい女性だということを示していた。
 家柄も性格もよい美人で、広大な領地を管理する手腕にもすぐれているとあれば、結婚相手は引く手あまただろう。見る目のあるロンドンの紳士は、競い合って求婚するにちがいない。
 財産でも身分の点でも、自分はその競争に参加する資格がないと考えると、グレヴィルは一抹の悲哀を感じた。
 だが、彼は妻を望んでいるわけではなかった。少なくとも、いまや軽蔑するロンドンの社交界にデビューしたがっているような貴族の妻は。グレヴィルは落胆を振り払うように言った。「それなら、お互いさまということでどうだろう? 僕はあなたに歓迎されるにふさわしい格好ではなかったことを謝りたい」
 「わかったわ。お互いさまね」アマンダはにっこりしてうなずいた。
 グレヴィルは思わず息をのんだ。なんと美しいのだろう。公平に見ても、彼女ほどの美人には会ったことがないが、誘うように吊り上がった唇も、頬に輝きを与えるほほえみも、やさしく魅力的な顔つきも、とてもこの世のものとは思えないほどだった。
 全身の神経が高ぶり、グレヴィルはふたりの距離を縮めて彼女にキスしたいという抗しがたい衝動に駆られた。
 だが、さいわいにも分別が打ち勝った。世話になっている恩人の娘にキスをするのは具合が悪いと自分に言い聞かせながら、彼は後ろに下がった。体のほかの部分は前に進みたいと叫んでいたにもかかわらず。
 ふいにアマンダが気まずい沈黙を破って、屋敷に戻ろうと言い出したような気がしたが、彼はぼんやりしていてよく理解できなかった。
 しっかりしろ、グレヴィル。最初はこの気位の高い美人をからかって楽しむつもりだったが、いまや彼女についてもっと知りたくなっていた。
 「では、ご一緒に」彼はわざと歩調を緩め、少しでもふたりの時間を引き延ばすために気のきいた会話を考えようとした。「いろいろとやらなければならないことがあって大変でしょう。今朝、僕の世話をしてくれた従僕のルークから、この屋敷で悲しい出来事があったと聞きました。心からお悔やみ申し上げます、ミス・ネヴィル。あなたがどれだけみごとにこの家を切り盛りしていても――僕の目には完璧に映るが――そんな状況でお母さんの仕事を引き継ぐのは、けっして簡単なことではなかったはずだ」
 ほほえみが消えて、驚いたことに彼女の目の端に涙がきらめいた。「ええ……大変でした」
 その寂しげな表情に心を動かされる理由はなかったものの、どういうわけかグレヴィルは胸が痛んだ。アマンダの気をそらそうと、彼は言った。「シーズンが始まったらロンドンへ行くんでしたよね?」
 「ええ。でも、けっして母の思い出を忘れるためではないわ。できれば、ずっとここで喪に服していたいけれど、母が……逝ってしまう前に約束したんです。予定どおりロンドンへ行くと。ほかの女性にくらべて、私のデビューは何度も延期されているから、実際にはこれが最後のチャンスなんです」

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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